ラフマニノフ (1873 - 1943)

ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 作品30 (約41分)

 1909年、ラフマニノフは初めてのアメリカ演奏旅行のために新しい第3番のピアノ協奏曲を作曲し、同年11月にニューヨークで自らのピアノ演奏で初演した。名ピアニスト、ヨーゼフ・ホフマンに献呈されたが、手の小さかったホフマンがこれを演奏することはなかったという。
 ロシアの民謡や聖歌を彷彿(ほうふつ)とさせる主題が全楽章を構造的に緊密に結びつけると同時に華麗なピアノ書法が展開されるという点では《協奏曲第2番》と同じだが、構成面での洗練の度合いは《第3番》でさらに強まっている。極めて高度なピアノのテクニックが要求されることから演奏される機会に恵まれなかった時代もあったが、現代では世界中で愛奏され、《第2番》と並ぶ人気を誇る。

第1楽章 アレグロ・マ・ノン・タント。自由なソナタ形式。控えめな動きで狭い音程間をさまよう第1主題に関して、作曲者自身は民謡や聖歌から借用したものではなく、ただ「歌手が歌うように旋律を歌わせたかった」と述べているが、実際には古い聖歌の旋律との類似性が指摘されている。ラフマニノフの体の中に染み込んでいた民族的な旋律が無意識に引き出されたのだろう。夢見心地の歌謡的な第2主題も、ロシア民謡に見られるような対旋律との絡み合いを伴い、雄大な景色を繰り広げていく。
第2楽章 間奏曲:アダージョ。3部形式(変奏曲)。優美でメランコリックな主題ではじまり、それが様々に変奏されていく。中間部は軽やかなリズムとなり、ワルツが優しく響くが、ここで第1楽章第1主題を連想させる楽想が見え隠れする。
第3楽章 フィナーレ:アラ・ブレーヴェ。自由なソナタ形式。第2楽章から続けてはじまり、主題の持つエネルギーに突き動かされるかのように音楽が疾走する。展開部では第1楽章第2主題をもとにした楽想が現れ、きらびやかなピアノの高音域、鋭いリズムで高揚感を強め、さらに再現部から終曲部分にかけての絢爛豪華(けんらんごうか)な音の洪水が聴く者を圧倒する。

作曲年代:1909年
初演:1909年11月28日。ラフマニノフ自身のピアノ、ウォルター・ダムロッシュ指揮、ニューヨーク交響楽団、ニューヨークにて

(高橋健一郎)