第1958回 定期公演
Bプログラム

2022年5月26日(木)
開場 6:20pm 開演 7:00pm

サントリーホール アクセス 座席表

【重要なお知らせ(3/16更新)】
1回券およびWEBセレクト3+の発売について

  • 2022年5⽉Bプログラム プログラム&曲⽬解説

    海は作曲家にとって着想の宝庫である。水や波の動き、雄大さ、日の出から日没までの変化を映し出す水面、そして異国へとつながるロマン。本日取り上げられる作曲家たちは皆、海や水に含まれる詩的・音楽的要素を掬(すく)い上げることに成功した。船旅が通常であった遠い異国への旅は、飛行機の登場で一変する。ラヴェルの《ピアノ協奏曲ト長調》は、そうした新時代の米仏文化交流の幕開けを象徴する作品である。
    (安川智子)

  • メンデルスゾーン/序曲「静かな海と楽しい航海」作品27

     フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ(1809~1847)が19歳という若き日に作曲したこの演奏会用序曲は、ドイツの文豪ゲーテの短い2篇の詩「静かな海」と「楽しい航海」(いずれも『叙情詩集Lieder』に含まれる)を題材にした管弦楽曲である。すでにベートーヴェンが同名のタイトルで同じ2篇の詩を一曲のカンタータとして仕上げており、ニ長調という調性も共通している。ドイツの2人の巨匠の胸を借りたメンデルスゾーンは、詩的内容を言葉に縛られず純器楽作品へと転化させる彼の最大の強みとなる技術を、この序曲において身につけている。メンデルスゾーンは師のツェルターを通じて1821年にゲーテに出会っており、以後深く影響を受けることになる。
    「静かな海」は穏やかな海とも少し異なり、風のない怖ろしさを含む、死んだように静かな海である。霧が晴れると風が吹き、ようやく船が走り出す。「楽しい航海」とは順風満帆な航海の様子と水夫の生き生きとした心情を表している。最後に陸が眼前に近づく時の喜びは、航海を体験した者だけが真に共有できる感情であろう。ゲーテは体験によって内から湧き起こる心の動きを重視し、詩のリズムに書き留めた。メンデルスゾーンは、豊かな低音と倍音の残響効果を生かしたオルガン的ポリフォニーによって雄大なる海の静けさを表現し、フルートの躍動するリズムとホルンの参入によって順調な航海の始まりを知らせる。風や水の動きの描写と人間の感情が一体化し、トランペットのファンファーレが鳴ると目的地の到来が全合奏で祝される。最後に海の静けさが一瞬回帰する。

    (安川智子)

    演奏時間:約12分
    作曲年代:1928年
    初演:1828年9月7日、ベルリンにて私的に初演(メンデルスゾーンの両親宅)、1832年12月1日、ベルリン、ジングアカデミーにて公的初演

  • ラヴェル/ピアノ協奏曲 ト長調

    自然のリズム表現は、近代のフランス音楽まで脈々と受け継がれている。ドビュッシー《海》(1905)と同時期に、モーリス・ラヴェル(1875~1937)は《海原の小舟》で大西洋に浮かぶ小舟を表現していた。しかし第1次世界大戦を経て、陸と海の関係は一変する。戦後に意気消沈していたラヴェルに、1927年5月のリンドバーグによるニューヨーク・パリ間無着陸横断成功のニュースは、どんな夢を与えたであろうか。同じ年の12月、フランスから北米演奏旅行に(もちろん船で)発ったラヴェルは、1928年1月ニューヨークに到着する。この地で交流を深めたのが、すでに《ラプソディー・イン・ブルー》で名声を得ていたガーシュウィンである。
    帰国後ラヴェルはピアノ協奏曲の作曲にとりかかる。ジャズの要素は同時進行で作曲していた《左手のための協奏曲》の方にずっと多く含まれていると作曲家は語るが、《ピアノ協奏曲 ト長調》の第1楽章においてもガーシュウィンの影響は顕著である。新時代の活気に励まされたラヴェルは、あたかもこれまでの人生を懐古するかのように、古典的形式や自身のルーツであるスペインの主題、過去の自作や尊敬する作曲家たちへのオマージュを織り込んだ。1932年のインタビューの中で、ラヴェルはこの協奏曲について「私が求めていた内容と形式の実現に近づいた作品のひとつであり、私の意志をコントロールすることに最も成功した作品のひとつだと思う」と語った。
    第1楽章 アレグラメンテ、ト長調、2/2拍子。冒頭のピッコロによる第1主題はバスク地方の笛の響きであるとも指摘される。多彩な打楽器と幻想的な音色、ピアノのジャズ風ひとり語りのような第2主題など、時空を自由に移動しながら、全体としてはソナタ形式のような構成をもつ。
    第2楽章 アダージョ・アッサイ、ホ長調、3/4拍子。エリック・サティの世界と自身の《亡き王女のためのパヴァーヌ》を融合させたような甘美な緩徐楽章。
    第3楽章 プレスト、ト長調、2/4拍子。技巧を尽くした純粋なる音のぶつかり合いの快楽を追求するブラブーラ(華麗な)協奏曲の典型(ラヴェル以後、ブリテンやジョリヴェの《ピアノ協奏曲》も同様の終楽章をもつ)。冒頭と結尾が同じト長調の和音とリズムで円環を結んでおり、アンコールとしてそのまま楽章を再開することも可能である。

    (安川智子)

    演奏時間:約22分
    作曲年代:1929~1931年
    初演:1932年1月14日パリ、サル・プレイエル。マルグリット・ロンによるピアノ独奏、ラヴェル指揮、ラムルー管弦楽団

  • リムスキー・コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」作品35

    ロシアの作曲家ニコライ・リムスキー・コルサコフ(1844~1908)の《シェエラザード》こそ、オリエントに続く海のイメージを音楽家たちに鮮烈に印象づけた作品である。実際彼は海軍兵学校出身であり、航海経験があった。リムスキー・コルサコフから多大な影響を受けているラヴェルは、《「シェエラザード」序曲》(1898)と、《歌曲集「シェエラザード」》(1903)を残している。
    「シェエラザード」とは、アラビアン・ナイトの名でも知られるアラブの説話集『千一夜物語』の登場人物である。中世から今日まで変遷しつつ伝わるこの物語では、妻の不貞を体験したシャフリアール王が妻を処刑し、以来国の若い女性を妻にしては、一夜を共にして次々と殺していく。そこで大臣の娘シェエラザードは自らシャフリアール王のもとに嫁ぎ、毎晩さまざまな物語を語り聞かせる。物語の続きが気になる王は、シェエラザードを殺すことを先送りにし、とうとう心改める。
    1887年、急死したボロディンの未完のオペラ《イーゴリ公》の管弦楽補筆に取り組んでいたリムスキー・コルサコフは、『千一夜物語』のシェエラザードが語る物語からさまざまなエピソードや情景を取り出し、散りばめて管弦楽作品を書くことを思いつく。友人の勧めで各楽章につけられた標題は、出版用のスコアから削除されたが、今日では標題付きで演奏される。作曲家自身は、東方の雰囲気とともに聴衆各自が自由な物語を楽しむことを意図していたようである。
    そのため全体を通じて物語を導く音楽的主題が、枠組みを設定する。第1楽章冒頭でユニゾンによって鳴らされるシャフリアール王の主題と、独奏ヴァイオリンがハープの伴奏とともに奏でる、異国的なシェエラザードの旋律である。木管楽器の和音を挟んで続くこの2つの主題が、ソナタ形式の第1主題と第2主題のように、第1楽章の音楽的展開の要となる。シェエラザードの旋律は、その後各楽章の前奏や間奏、後奏で挿入され、シェエラザードが各物語へと導いていく姿を想像させる。第4楽章の冒頭では、第1楽章のシャフリアール王の主題も再現する。「海と船」という物語の基調をなすテーマとともに、各楽章の音楽的主題が第4楽章に回帰し、円環的統一性を与えている。3連音符の連なりからなるシェエラザードのリズムは、海の水の揺らぎにも転じることができる。

    (安川智子)

    演奏時間:約46分
    作曲年代:1929~1931年
    初演:1932年1月14日パリ、サル・プレイエル。マルグリット・ロンによるピアノ独奏、ラヴェル指揮、ラムルー管弦楽団

  • 指揮:ファビオ・ルイージ
    指揮:ファビオ・ルイージ

    ファビオ・ルイージ、2022年9月から3年契約でNHK交響楽団の首席指揮者に就任する─。この喜ばしいニュースは昨年4月に発表された。伝統と格式を誇るオペラハウス、フェスティバル、オーケストラで創造の喜びを分かち合うルイージとN響の新時代が始まろうとしている。
    1959年1月イタリア、ジェノヴァ生まれ。オーストリア第2の都市グラーツの歌劇場でコレペティトゥア(オペラの稽古(けいこ)ピアニスト)、指揮者として活動を開始。ほどなくベルリン・ドイツ・オペラ、バイエルン国立歌劇場、ウィーン国立歌劇場から招かれた。これまでにスイス・ロマンド管弦楽団、ウィーン交響楽団、ドレスデン国立歌劇場、札幌の国際教育音楽祭PMF、メトロポリタン歌劇場、チューリヒ歌劇場の要職を歴任。ザルツブルク音楽祭で指揮したリヒャルト・シュトラウスの《ダナエの愛》、メトロポリタン歌劇場での《ジークフリート》《神々のたそがれ》、セイジ・オザワ松本フェスティバルでの《ファルスタッフ》《エフゲーニ・オネーギン》も賞賛を博す。ブルックナー、マーラーの交響曲、フランツ・シュミットのオラトリオなど録音も枚挙にいとまがない。現在デンマーク国立交響楽団首席指揮者とダラス交響楽団音楽監督を兼務。
    N響との初共演は2001年。2004年以降は定期公演の常連で、昨年11月はブルックナーの《交響曲第4番「ロマンチック」》とチャイコフスキーの《交響曲第5番》に腕をふるった。
     
    (奥田佳道/音楽評論家)
     

  • ピアノ:小菅 優
    ピアノ:小菅 優

    東京生まれ。9歳で演奏活動を始め、10歳からヨーロッパに暮らし、ドイツのハノーファーやザルツブルクで学んだ。2005年カーネギー・ホールでリサイタル・デビュー。2006年にはザルツブルク音楽祭で日本人ピアニストとして2人目となるリサイタル・デビューを果たし、その後2010年、イーヴォ・ポゴレリチの代役として同音楽祭に再出演した。国内外のオーケストラから多く招かれ、これまでに小澤征爾、ロジャー・ノリントン、ジョナサン・ノットなどの指揮で、ベルリン交響楽団、hr交響楽団、シュトゥットガルト放送交響楽団、スイス・ロマンド管弦楽団ほかと共演。N響ともたびたび共演し、タン・ドゥンの《ピアノ協奏曲「ファイア」》日本初演(2008年)ではソリストを務めた。第64回芸術選奨音楽部門文部科学大臣新人賞、第48回サントリー音楽賞ほか数々の賞を受賞。2011年から4年をかけて録音したベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集、趣向を凝(こ)らしたプログラムによるリサイタルなど、意欲的な活動が高く評価されている。
     
    ([高坂はる香/音楽ライター)
     

ファビオ・ルイージ インタビュー
5月Bプログラムについて

フィルハーモニー
5月号(PDF)

出演者プロフィール&曲目解説等をご覧いただけます

チケット情報

チケット購入・空席照会

発売開始日
2022年4月13日(水)11:00am
[定期会員先行発売日:2022年4月7日(木)11:00am]

  S席 A席 B席 C席 D席
一般 9,800円 8,400円 6,700円 5,400円 4,400円
ユースチケット 5,800円 4,800円 3,800円 2,800円 1,800円
(税込)

WEBセレクト3+

SPRINGシーズンの「WEBセレクト3+」は5月・6月の2か月を対象として実施いたします 詳細

お好きな公演を3つ以上セレクトすると、1回券がお得になります。
Spring(5~6月)内の公演(6プログラム12公演)のうち、3公演以上まとめて購入すると、1回券の一般料金より約8%割引します。

WEBチケットN響のみでの発売となります。
1回券一般発売日からお申し込みいただけます。
割引の併用はできません。
定期会員の方は会員割引(約10%割引)をご利用ください。

  • ユースチケットのご案内(要登録/取り扱いはN響ガイドのみ)
  • ※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
  • ※この公演のお取り扱いは、N響ガイドおよびWEBチケットN響のみです。
  • ※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
  • ※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
  • ※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
  • ※未就学児のご入場はお断りしています。
お問い合わせ・
お申し込み
N響ガイド TEL:03-5793-8161
WEBチケットN響

主催:NHK / NHK交響楽団