12月定期公演聴きどころ
ヤナーチェク《シンフォニエッタ》と並ぶ名作《グラゴル・ミサ》をN響のコンサートで!
今、ヤナーチェクが人気なのをご存知でしょうか?村上春樹の話題の小説『1Q84』に、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団の《シンフォニエッタ》が登場するからです(小説では「ヤナーチェック」と表記)。本屋さんにもこの小説の隣にひっそりとCDが置かれていたりします。
そんな話題のヤナーチェクですが、初期はモラヴィア出身の田舎のドヴォルザーク風の作風でぱっとしませんでした。しかし晩年ともいえる1917年に運命の女性カミラと出会います。彼女には夫も子どももいました。もちろん、ヤナーチェクにも妻がいます。2人はある程度の距離を保ちながら交流を続けました(《弦楽四重奏曲第2番「ないしょの手紙」》は、ヤナーチェクからカミラへの手紙のことです)。ヤナーチェクにとってカミラは創造の泉となり、この第2の青春は「田舎のドヴォルザーク風」から20世紀を代表する作曲家へと変貌させました。もちろん、《シンフォニエッタ》はカミラとの出会いのなかから生まれた彼の代表作の1つです。
N響の12月定期のCプロでは、《シンフォニエッタ》と同じ年の1926年に作曲されたヤナーチェクの傑作《グラゴル・ミサ曲》が28年ぶりに登場します。曲は「古代スラヴ語」を使い、キリスト教のミサ典礼文を意訳したものをテキストにしています。「グラゴル」とは、スラヴの人々が使った最古の文字である「グラゴル文字」のことで、ヤナーチェクは汎スラヴ主義の支持者として、このミサ曲はスラヴ文化のための奉祝音楽と考えられています。
宗教曲ではありますが、《グラゴル・ミサ曲》はヤナーチェクならではのスラヴ特有の劇的魅力にあふれた作品です。曲中には、《シンフォニエッタ》を思わせる金管のファンファーレなども含まれます。この機会にモラヴィア民謡をルーツにもつ、ヤナーチェクの熱い情熱を秘めた《グラゴル・ミサ曲》を、デュトワの棒でじっくりと味わってみてはいかがでしょうか。
[三橋圭介]
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