9月定期公演聴きどころ

Photo by Steffen Jaenicke

N響ではお馴染みのタン・ドゥンの改訂初演作
Bプログラムは、中国出身のタン・ドゥン。2006年にメトロポリタン歌劇場でドミンゴが主役を歌ったオペラ《始皇帝》が世界初演され、2000年公開の映画『グリーン・デスティニー』がアカデミー賞作曲賞を受賞するなど、現在、世界が最も注目する作曲家の1人である。また昨年は上海でのスペシャル・オリンピックの開会式で上海交響楽団を振るなど、指揮者としても活躍している。
N響との付き合いは深く、1999年にデュトワ指揮で《門~オーケストラル・シアター》(N響委嘱作品)が世界初演され、2002年には自らN響を指揮してオペラ《TEA》を世界初演。2005年にはN響定期公演の指揮台に立ち、自作の《ザ・マップ~チェロとビデオとオーケストラのための協奏曲》やチャイコフスキーの幻想序曲《ロメオとジュリエット》を振るなど、密度の濃い関係が続いている。
今回の定期公演で、タンは自作の《マルコ・ポーロの4つのシークレットロード~オーケストラと12のチェロのための(2007年版)》を日本初演する。この作品は2004年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で初演され、今回は改訂版が演奏される。ベルリン・フィルの12人のチェリストたちをソリストに想定して書かれた作品だけに、N響の12人のチェリストたちの妙技が聴きものである。
[山田治生・音楽評論家]
《レディ・サラシナ》でリヨンをわかせたエトヴェシュが、新作でN響初登場
9月Cプログラムに登場するペーテル・エトヴェシュは、巨匠ブーレーズからフランス屈指の精鋭集団アンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督を任され、欧州楽壇の中核として活躍してきた存在。作曲家としても、現在、世界で最も委嘱の多い作曲家の1人。日本の中古文学傑作の一つ『更級日記』に基づく《レディ・サラシナ》(この3月リヨン国立歌劇場で初演。舞踏家の天児牛大の演出・振付も話題!)、原作では女性3人によるチェーホフの『3人姉妹』を男性3人で演じる《Three Sisters》等々、発表するごとにその刺激的な作品の話題は世界を駆け巡ってきた。今回N響とルツェルン音楽祭で共同委嘱した《セブン》も、ルツェルンで絶賛を浴びたことが伝えられている。
さらに興味を引かれることは、エトヴェシュ作品の初演などに立ち会ったドイツ文学者で音楽評論家としても活躍する岩下眞好氏が伝えている欧州楽壇や聴衆の変化。現代の時代の作品と古典の名作をともにプログラミングすることによって――つまり「現代の視野から『古典』を見直してみると」――今まで軽視されがちだった部分(たとえばソナタ形式のテーマに対する副次部分や副声部)も、作曲家の固有の言葉として大切に扱われ、山場に向かって手綱をさばいていくという音楽作りには見られない、作品との繊細きわまりない対峙が作曲家の言葉の1つ1つを丹念に掬い出していたという(2007年9月22日付『東京新聞』から引用)。古楽が古典・ロマン派に新鮮な響きをもたらしたように、現代の作品を透して名曲が新たな輝きを放つ時代が訪れそうだ。
9月定期は現代と古典の出会うプログラミング。N響からの逸早い世界最前線の響きを、皆さまにお届けしたい。エトヴェシュという欧州の中心的音楽家がCプロでその本領を発揮する。
[小倉多美子]
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