NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

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2017年12月26日

広上淳一、師バーンスタインを語る|2018年1月定期公演Cプログラムに寄せて

師バーンスタインについて語る指揮者、広上淳一氏(2017年12月)

師バーンスタインについて語る指揮者、広上淳一氏(2017年12月)

 

 広上淳一は、1月定期公演でレナード・バーンスタイン生誕100年を祝して、彼の《スラヴァ(政治的序曲)》と《セレナード(プラトンの『饗宴』による)》を取り上げる。広上は、1984年のキリル・コンドラシン国際青年指揮者コンクール優勝後、アムステルダムで研鑚(けんさん)を積んでいた。そして、1987年、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(現在のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団)に客演に来ていたバーンスタインのアシスタントに就くことができた。

 

「1987年にバーンスタイン先生がコンセルトヘボウ管にいらっしゃって、マーラーの《交響曲第4番》を指揮することになっていました。コンセルトヘボウ管は、先生とロンドン、キール、ユトレヒト、アムステルダムなどで演奏会をするので、そのアシスタントをする若い指揮者を探していたのです。私は1986年9月からアムステルダムに住んでいて、コンセルトヘボウ管から電話がありました。そして私がアシスタントをすることになり、ドレス・リハーサルの音響テストで先生の代わりに振ったり、レッスンを受けたりして、いろいろな薫陶を受けました。

 

 バーンスタイン先生は、ニューヨーク・フィルとの来日公演も聴いた、憧れの人でした。でも、当時の彼はとてもさびしそうでした。

 

 バーンスタイン先生は、やることすべてに大演出がされていて、リハーサルに現れると、テューバから一人ひとりに抱擁して、「ハロー、ハウ・アー・ユー?」とあいさつに1時間かけました。でも、音楽が始まると第一級のオーケストラがさーっと彼のマジックに飲み込まれていくのを目の当たりにしました。そんな彼の天才的カリスマを見て、オレ、指揮者辞めようかと本当に思いました(笑)。

 

 マーラーの《第4番》のリハーサルで、オーケストラはあっという間に彼のペースとなり、バーンスタイン先生にマーラーが溶け込でいるようでした。20世紀最後の巨匠の片鱗(へんりん)に触れられたのは幸運でした。

 

 リハーサルのあと、先生の部屋に呼ばれて、マーラー《第4番》を『ピアノで弾いてみろ』と言われて、『この音符をどう感じる?』とか訊(き)かれました。第1楽章の冒頭は、夢の中に入っていくところで少しリタルダンドがありますが、マーラーが子供時代に住んでいた家の前を通り過ぎていく馬車が描かれているのでその鈴の音にはリタルダンドがないということを教わりました。2時間くらいレッスンを受けましたね。

 

 今でも一番印象に残っているのは、『ジュンイチ、お前の歩幅で歩け、ただし止まるな。歩き続けて、勉強しなさい』と言われたことです。

 

 巨匠と知己を得られ、20代でそういうことが体験できたのはすごくラッキーでした。短かったけど、精一杯、先生のそばにいられてよかった。

 

 そして、1991年2月にN響の定期公演にデビューしたとき、マーラーの《交響曲第 4番》を取り上げました」

 

広上淳一氏

 

 広上はこれまでにもN響とはバーンスタインの《交響曲第1番「エレミア」》を共演している。今回は《スラヴァ!》と《セレナード》。《スラヴァ!》は、バーンスタインの盟友ムスティスラフ・ロストロポーヴィチに捧げられた。

 

「政治的序曲とつけられていますが、要は愛とは何ぞや?という友愛的な作品だと思います」

 

 《セレナード》はヴァイオリン協奏曲的な作品。今回の共演者は五嶋龍。彼の姉、五嶋みどりはバーンスタイン自身の指揮で演奏し、2度、弦を切りながらも、最後まで弾き通したというタングルウッド音楽祭での伝説を持つ。

 

「彼の若い頃の作品で、思いの丈をぶつけているようなところもあります。プラトンの『饗宴』を題材としています。昔、シンシナティ交響楽団で演奏しました(注:1999年11月、独奏はワディム・グルズマン)。みどりさんとは何度も共演しているのですが、龍君とは今回が初めて。楽しみです」

 

 演奏会の後半はショスタコーヴィチの《交響曲第5番》。

 

「バーンスタイン先生はショスタコーヴィチのことをとても尊敬していました。《交響曲第5番》は、私にとっても、ノールショピング交響楽団との日本公演で持ってきた思い出の曲です。

 

 第3楽章には彼の当局への心情が表れているのでしょうね。第4楽章ではカモフラージュしていると思います」

 

 N響との共演は30年を超える。

 

「N響デビュー(1985年5月)から30年以上、こんなに長く可愛がってもらえるとは思っていませんでした。一緒に演奏させてもらっていることに感謝しています。私ももうすぐ60歳になります。少しはお役に立てるような引き出しもできたと思いますので、同じ国の指揮者として、世界クラスのオーケストラとなったN響に何か助けられることがあればと思っています。いろいろな意味で彼らには助けられました。尊敬する仲間がいっぱいいます」

 

聞き手・文 山田治生(音楽評論家)

 

第1876回 定期公演 Cプログラム
2018年1月12日(金)7:00pm 13日(土)3:00pm

NHKホール

 

指揮:広上淳一

ヴァイオリン*:五嶋 龍

 

バーンスタイン/スラヴァ!(政治的序曲)

バーンスタイン/セレナード(プラトンの『饗宴』による)*

ショスタコーヴィチ/交響曲 第5番 ニ短調 作品47

 

 

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