NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

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2017年2月16日

「尾高賞」受賞作をMusic Tomorrow 2017 で再演!
作曲者のコメントを紹介

「第65回尾高賞」を受賞した池辺晋一郎《シンフォニーX 「次の時代のために」》と一柳慧《交響曲第10番 ─ さまざまな想い出の中に ─ 岩城宏之の追憶》が、N響特別公演「Music Tomorrow 2017」で再演されます。作曲者からよせられた受賞コメントを紹介します。

 

Music Tomorrow 2017

2017年6月9日(金) 開演 7:00pm

東京オペラシティ コンサートホール

 

岸野末利加/オーケストラのための「シェイズ・オブ・オーカー」(2017)[NHK交響楽団委嘱作品・世界初演]

マーク・アントニー・ターネイジ/ピアノ協奏曲(2013)[日本初演]

一柳 慧/交響曲 第10番 ― さまざまな想い出の中に ― 岩城宏之の追憶に(2016)[第65回尾高賞受賞曲]

池辺晋一郎/シンフォニーX「次の時代のために」(2015)[第65回尾高賞受賞曲]

 

指揮:ローレンス・レネス

ピアノ:反田恭平

 

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尾高賞について

 

 

『第65回尾高賞 受賞によせて』

池辺晋一郎

 

 管弦楽曲を書く機会は少なくないが、何かのアニヴァーサリーや祝典などであったりする場合が大半を占める。自由な発想で作曲できるケースは、実は稀だ。故武満徹さんのご令娘である真樹さんから電話をもらったのは、3年近く前だったと思う。

 武満徹没後20年に際し、仙台フィルハーモニー管弦楽団が特集コンサートを催す。自分がその監修を務めるが、武満作品だけでなく故人と近かった人の新作を並べたい。それならあなただ、ということだった。僕は20代後半からしばらく武満さんのアシスタントをし、またある時からその映画音楽録音で指揮を担当して、ご本人はもちろん、ご家族ぐるみ親しくさせていただいてきたのである。

 仙台フィル委嘱。長すぎないようという以外、条件はなかった。このような稀有な機会に書くなら交響曲だと思った。2013年に僕は《交響曲第8番》と《第9番》を書いたが、その後やってきたのは「9」のトラウマ。「10」を書くか死ぬか、二者択一だと思った。振り返れば「8」も「9」も、2011年の東日本大震災と関わる発想だった。が、そのあと自然災害に加えテロなどによる不穏な黒雲がこの星を覆いつづけている。これからの世界はどうなるのか……。

 僕が監督を務めるせたがやジュニアオーケストラのために《次の時代のための前奏曲》(2011)を、文京シビックホール委嘱で金管八重奏のために《次の時代のためのファンファーレ》(2015)を書いた。《第10番》をそれらに連なるものにしたいと考えた。

 「10」には「8」及び「9」のモチーフが登場する。「9」で二人の「声」が語り、ホルンがそれを繰り返した「幸福は何だと思うか」(長田弘の詩の一節)も、再び反芻される。混迷の時代だからこそ失いたくない次の時代への希望の心を内蔵させたかった。

 拙作が尾高賞をいただくのは3度めだが、今回畏敬する一柳さんの《交響曲第10番》と同時の受賞は、とりわけ嬉しい。初演の尾高忠明氏と仙台フィル、武満真樹さん、そして武満徹さんの魂に感謝しつつ……。

 

(いけべ・しんいちろう/作曲家)

 

プロフィール

 

1943年9月15日、水戸市生まれ。1967年東京芸大卒。1971年同大学院修了。1966年日本音楽コンクール第1位。同年音楽之友社室内楽曲作曲コンクール第1位。1968年音楽之友社賞。以後ザルツブルクTVオペラ祭優秀賞、イタリア放送協会賞3度、国際エミー賞、芸術祭優秀賞4度、尾高賞2度(1991年 《シンフォニーIV》、1999年《悲しみの森 ――オーケストラのために》)、毎日映画コンクール音楽賞3度、日本アカデミー賞優秀音楽賞9度などを受賞。1997年NHK交響楽団有馬賞、2002年放送文化賞、2011年横浜文化賞、2015年姫路市芸術文化大賞、2016年渡邉暁雄音楽基金特別賞。2004年紫綬褒章を受章。作品:交響曲10曲、ピアノ協奏曲3曲、チェロ協奏曲、オペラ《死神》《耳なし芳一》《てかがみ》《鹿鳴館》《高野聖》ほか管弦楽曲、室内楽曲、合唱曲、邦楽曲など多数。映画「影武者」「楢山節考」「うなぎ」「春を背負って」他約70本、俳優座・文学座・無名塾他演劇音楽約500本、TV「独眼竜政宗」「澪つくし」「元禄繚乱」「未来少年コナン」他。著書多数。現在東京音楽大学客員教授、横浜みなとみらいホール館長、東京オペラシティ文化財団ミュージック・ディレクター、石川県立音楽堂洋楽監督、せたがや文化財団音楽事業部監督、文化庁国民文化祭実行委員会副会長、日中文化交流協会理事長、新国立劇場、東京交響楽団、放送文化基金他の理事、評議員など。世界平和アピール七人委員会委員。2009年3月まで13年間TV「N響アワー」の司会。

 

 

『第65回尾高賞 受賞によせて』

一柳 慧

 

 《交響曲第10番》は、昨年私が83歳の時に作曲した作品です。この年まで継続して作曲を続けてこられたのは、ひとえに、私の音楽に関心を寄せて下さり、積極的にさまざまな曲の演奏を行って下さった指揮者や演奏家の方々、そして長い年月にわたって聴き続けて下さった聴衆の皆さんの支援に、大きくあずかっていることは言うまでもありません。

 今回尾高賞にお選びいただいたことと合わせて、心よりお礼を申し上げます。

 《交響曲第10番》は、私の10曲の交響曲の中では、比較的小振りな作品です。それは前作である《8番》と《9番》が現代的テーマによる大型の4楽章構成であることと関係しています。

 《8番》は3.11の東日本大震災と大津波と福島の原発事故の自然と人為的災害がテーマとして取り扱われており、《9番》は混迷化してきた世界情勢の中で発生している難民の問題が対象とされているからです。《10番》はそれらにくらべると、よりパーソナルな身近な音楽的内容にしたいという思いがあり、昨年が没後10年の節目の年だったことから朋友の岩城宏之氏のイメージで書くことにしました。自らを初演魔と名乗っていた岩城さんはオーケストラ・アンサンブル金沢にコンポーザー・イン・レジデンスの制度を設け、日本の作曲界や現代音楽に大きな貢献をされました。又岩城さんは晩年に、若い頃のプロフェッションであった打楽器奏者として復活され、指揮者と同時に打楽器奏者としても活躍されました。《交響曲第10番》はそのような岩城さんのイメージの思い出に触発されて書き下ろした追悼の作品です。

 

(いちやなぎ・とし/作曲家)

 

プロフィール

 

作曲家、ピアニスト。1933年2月4日、神戸生まれ。1954年~57年までニューヨークのジュリアード音楽院に学び、ジョン・ケージらと前衛的音楽活動を展開、1961年吉田秀和等の「20世紀音楽研究所」フェスティバルの招聘によりに帰国。偶然性の導入や図形楽譜を用いた作品の発表のほか、日欧米の新しい音楽を紹介しさまざまな分野に強い刺激を与える。1966年~67年、ロックフェラー財団の招聘により再度渡米、アメリカ各地で作品発表会を行う。ヨーロッパにおいてもドイツ学術交流会(DAAD)の招聘や、ベルリン芸術週間、ウィーン・モデルンなどの音楽祭からの作品委嘱など、活発な活動を行う。80年代から90年代にかけて、邦楽器のための作品を毎年のように発表し、「東京インターナショナル・ミュージック・アンサンブル」(TIME)や、「アンサンブル・オリジン」を組織し、欧米各地にて演奏旅行を行い日本の伝統音楽の発信にも力を注ぐ。作品はオペラ、交響曲をはじめとする管弦楽作品、室内楽、雅楽や声明を中心とした伝統音楽など多岐にわたっており、音楽の空間性を追求した独自の作風による作品を発表し続けている。これまでにフランス芸術文化勲章、毎日芸術賞、京都音楽大賞、サントリー音楽賞、紫綬褒章、旭日小綬章、文化功労者など多数。尾高賞は今回5度目の受賞となる。現在、神奈川芸術文化財団芸術総監督。

 

 

 

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