ストラヴィンスキー (1882 - 1971)

葬送の歌 作品5 (約12分)

 そして、長らく幻の曲であった《葬送の歌》へ。タイトルが示すとおり、この作品は敬愛する師、リムスキー・コルサコフを亡くしたストラヴィンスキーが、1908年の夏、その死を悼んで作曲した音楽であった。しかし、その楽譜はサンクトペテルブルクでの初演後、革命の混乱のなかで失われた。そう信じられてきたのである。
 しかし、2015年のサンクトベテルブルク音楽院の図書館改修工事の折、初演から100年以上の時を経て《葬送の歌》がついに発見される。図書館司書のシドレンコから連絡を受けた音楽学者のブラギンスカヤは、これが間違いなく自らも長年探しもとめていた楽譜であることを確認。これにより、《花火》や《幻想的スケルツォ》の「初期ストラヴィンスキー」と、ロシア・バレエ団の作曲家としての「世界のストラヴィンスキー」の間が、またひとつ豊かな音楽で埋められることになった。
 興味深いのは、ストラヴィンスキーはこの曲を管楽合奏のために書いたと記憶していたのだが、出てきた楽譜はフル・オーケストラのためのものだったことである。死の厳粛な雰囲気のなか、葬列が過ぎ去っていくかのように、さまざまな楽器が特徴的なモチーフを受け継いでいく。

作曲年代:1908年夏
初演:1909年1月30日、サンクトペテルブルク、フェリクス・ブルメンフェーリト指揮、シェルメーテフ伯爵の管弦楽団 [復活演奏]2016年12月2日、サンクトペテルブルク、ワレリー・ゲルギエフ指揮、マリインスキー劇場管弦楽団

(藤田 茂)