スヴィリドフ (1915 - 1998)

組曲「吹雪」─プーシキン原作の映画から (約28分)

 この作品ははじめロシアの詩人・作家プーシキンの小説『吹雪』を題材にした映画のために書かれた。小説の舞台は19世紀初頭のロシアの田舎。身分の違いゆえに結婚を許されない若い男女が、教会で勝手に結婚式を挙げてしまおうとするが、当日ひどい吹雪のために、計画が狂い、運命を翻弄(ほんろう)される物語である。
 ゲオルギー・スヴィリドフはショスタコーヴィチに師事した作曲家で、1950年代頃からロシア的な性格の強い音楽を目指すようになっていった。1964年に映画『吹雪』の音楽を書き、その後1973年から1974年にそれを編曲し、独立した組曲とした。その音楽は、国民楽派的な雰囲気をもち、19世紀のロシアの農村の風景をありありと伝える。
 第1曲〈トロイカ〉は、ロシアの冬の大地を駆けるトロイカ(三頭立て馬車)の橇(そり)の音と御者の歌。第2曲〈ワルツ〉は、田舎の屋敷で踊られるワルツであろう。第3曲〈春と秋〉は、前半で優しい春のモチーフが奏され、後半はほぼ同一のモチーフが短調となる。第4曲〈ロマンス〉では、19世紀のロシア・ロマンス(歌曲)の抑揚をもつ旋律がメランコリックに、時に情熱的に紡がれていく。第5曲〈パストラール〉は、素朴なメロディが透明な響きを醸し出す。第6曲〈軍隊行進曲〉では一転して勇壮な音楽が管楽器によって奏され、第7曲〈結婚式〉では再び静かになり、絡み合う弦楽器の旋律が神秘的な雰囲気を生む。第8曲〈ワルツの残響〉では第2曲の〈ワルツ〉が追憶のように奏でられ、第9曲〈冬の道〉では、第1曲〈トロイカ〉のイメージが戻ってくる。なお、最初と最後のそれぞれ2曲ずつは映し鏡のようで、組曲全体が小説のように表紙と裏表紙をもつようである。

作曲年代:[映画版]1964年 [組曲版]1973~1974年
初演:[映画版]1965年2月10日(ソ連邦にて初公開)[組曲版]1974年と推測される

(高橋健一郎)