フォーレ (1845 - 1924)

組曲「ペレアスとメリザンド」作品80 (約19分)

 ベルギーの詩人・劇作家のモーリス・メーテルリンク(1862~1949)が1892年に発表した戯曲『ペレアスとメリザンド』(全5幕)は、宿命的な恋を描いた作品である。中世の架空の国アルモンドの王子ゴローは、泉のほとりで泣いていた若い女性メリザンドと出会い、妻にした。しかし彼女はゴローの若い異父弟ペレアスと親密になり、嫉妬(しっと)に狂ったゴローは、ペレアスを剣で殺し、その場から逃げたメリザンドもやがて静かに息を引き取る。森の奥深くにひっそりとたたずむ古い城。登場人物の感情が、神秘的な森、嵐の海、庭園の美しい泉、かぐわしい薔薇(ばら)の香りなどを背景に絡み合う。
 フォーレの《ペレアスとメリザンド》は、1898年に英訳された戯曲がロンドンで上演された際、劇付随音楽として作曲された。その後、組曲が編まれ、管弦楽用に書き直された。
 第1曲〈前奏曲〉 クワジ・アダージョ、ホ短調、3/4拍子。第1幕への前奏曲。メリザンドを思わせる穏やかな表情の音楽が静かに広がり、後半のホルン独奏による同音反復(ホルン信号)は、狩りに訪れたゴローの角笛を暗示する。
 第2曲〈糸を紡ぐ女〉 アンダンティーノ・クアジ・アレグレット、ト長調、3/4拍子。第3幕でメリザンドが城の奥の一室で糸を紡いでいる。紡ぎ車を表わす第1ヴァイオリンの3連符の動きにのせて、オーボエが主題を歌う。
 第3曲〈シチリア舞曲〉 アレグレット・モルト・モデラート、ト短調、6/8拍子。第2幕でペレアスとメリザンドが庭園の泉の前で戯れる場面の音楽。もとは1893年に書かれたチェロとピアノのための小品で、1909年に追加された。
 第4曲〈メリザンドの死〉 モルト・アダージョ、ニ短調、3/4拍子。第5幕への前奏曲。低弦のピチカートを背景に、複付点の重たいリズムの旋律が悲しみを広げる。

作曲年代:1898年
初演:[劇付随音楽]1898年6月21日、ロンドン、作曲者自身の指揮 [組曲版]1901年2月3日、パリ・コンセール・ラムルー、カミーユ・シュヴィヤール指揮

(柴辻純子)