バッハ (1685 - 1750)

組曲 第4番 ニ長調 BWV1069 (約20分)

 バッハが活躍した18世紀前半のヨーロッパでは、管弦楽曲はイタリア起源の協奏曲と、フランス起源の管弦楽組曲に大別される。バッハの真作として認められているものとしては、前者が《ブランデンブルク協奏曲》(BWV1046-1051)をはじめ、ヴァイオリンやチェンバロのための協奏曲が多数残っているのに対し、管弦楽組曲は4曲しかないうえ、自筆譜も残っておらず、すべてライプツィヒ時代(1723〜1750年)ないしは作曲者の死後に作成された筆写楽譜によって伝えられている。とはいえ、4曲ともに非常に魅力的な作品であり、特に第3番の〈アリア〉や、第2番の〈ポロネーズ〉は、バッハの全作品の中でも最もポピュラーな作品となっている。なお「管弦楽組曲」というジャンル名は現代の命名であり、当時は「フランス風序曲」を意味する「ウーヴェルチューレ(Ouvertüre)」というタイトルが使われていた。
 《第4番 ニ長調》の場合、冒頭の序曲が1725年12月に初演された教会カンタータ《われらの口を笑いで満たし》(BWV110)の冒頭合唱に改作されているために、少なくともそれ以前に作曲されたことは明らかである。オーボエと弦楽器による初期稿が存在し、トランペット3本とティンパニは、カンタータへの改作を機に追加されたと考えられる。初期稿の成立は、様式的観点からケーテン時代(1717〜1723年)ないしはそれ以前のワイマール時代(1708〜1717年)に遡(さかのぼ)るとも考えられている。
 第1曲はフランス風序曲で、ゆったりしたグラーヴェの間に9/8拍子のフーガが置かれている。第2曲は2つのブーレだが、第2のブーレではファゴット独奏の活躍がめずらしい。第3曲ガヴォット、第4曲メヌエットとフランス風の舞曲が続き、第5曲レジュイサンス(喜び)が、陽気に全曲を締めくくる。

作曲年代:1723年以前
初演:1723年以前、ワイマールまたはケーテンの宮廷にて

(樋口隆一)