リャードフ (1855 - 1914)

交響詩「バーバ・ヤガー」作品56 (約3分)

 19世紀後半のロシアにおいては、交響詩をはじめ、音画や音詩といったジャンル名を冠する作品が数多く生み出されており、ロシアの民謡や民族音楽、民話やおとぎ話を音楽に取り込むことが重視されていた。その中でもリャードフは「音の細密画家」として誉れ高い作曲家だ。自身の創作に対して厳しい審美眼を持っていた彼は、主としてピアノ作品において「音の細密画」を探究してきたが、1900年以降、より多彩な響きを求めて管弦楽作品に可能性を見出す。代表作《バーバ・ヤガー》《魔の湖》《キキモラ》では、いずれもロシアの民話やおとぎ話を題材に幻想的な情景を描いている。
 「バーバ・ヤガー」とは、ロシアの民話に登場する魔女で、鶏の足の上に建つ小屋に住み、子供をさらって食べてしまうという伝説が有名である。音楽作品の題材としてもしばしば取り上げられ、リャードフのほかにダルゴムイシスキーにも同名の作品があり、ムソルグスキー《展覧会の絵》にもバーバ・ヤガーが登場する。リャードフは、アファナシエフの『ロシア民話集』に触発されて本作品を作曲した。バーバ・ヤガーが口笛を吹いて杵(きね)と箒(ほうき)、臼を呼び出し、これらを使って飛翔する様子や、にぎやかな音をたてて森がざわめく様子が生き生きと描かれている。

作曲年代:1891~1904年
初演:1904年3月18日、サンクトペテルブルク、フェリクス・ブルメンフェリトの指揮

(成田麗奈)