ブルックナー (1824 - 1896)

交響曲 第3番 ニ短調(第3稿/1889)(約58分)

 今回のプログラム前半の曲ではウェーベルンは編曲、ベルクは引用というかたちでバッハ作品と向き合っていたが、ブルックナーの《交響曲第3番》とワーグナー作品との関係は別の様相を呈する。
 ワーグナーに心酔していたブルックナーは、1873年、当時住んでいたウィーンから、祝祭劇場の建設中でバイロイトに住むワーグナーを訪問する。その時に作曲中の《交響曲第3番》の献呈が受け入れられたので、ブルックナーはこの作品を「ワーグナー交響曲」と呼ぶようになった。
 《交響曲第3番》は完成しても、初演をウィーン・フィルハーモニー管弦楽団から何度も断られたが、初演の可能性がでてくると、ブルックナーは改訂に着手する。この改訂で、第1楽章と第2楽章での《トリスタンとイゾルデ》や《ワルキューレ》《タンホイザー》からの引用やそれを想起させる楽句が削除された。つまり、ワーグナー作品との直接的な関係は消し去られた。この第2稿は1877年に初演されたが大失敗で、演奏が終わった時、聴衆は25人ほどしか残っていなかったという(そのなかに当時、ブルックナーのウィーン大学の講義を聴いていた若きマーラーもいた)。にもかかわらず、《第3番》の楽譜は出版されることになった。ブルックナーにとって、初めての交響曲の出版であった。
 マーラーは必要ないと説いたが、ブルックナーはさらなる改訂に向かった。終楽章では弟子のフランツ・シャルクに手伝ってもらいつつ、最終的にはブルックナーが目を通すという流れで作業は行われた。この第3稿は1890年に出版され、初演は大成功をおさめた。今日まで多くの指揮者はこの稿で演奏している。
 第1楽章 より遅く、神秘的に、ニ短調、2/2拍子。弦楽器を背景に4度下行→5度下行の主題がトランペットによって提示される。第2主題は、3+2および2+3のブルックナー・リズムでヴァイオリンによって、第3主題はブルックナー・リズムと重なるように管楽器で力強く提示される。
 第2楽章 アダージョ、動きをもって、ほとんど歩くような速さで、変ホ長調、4/4拍子。3部形式。第2稿で大幅な削除が行われた。第3稿で加わったトランペットのファンファーレがさらに高揚感をもたらしている。
 第3楽章 かなり速く、ニ短調、3/4拍子。スケルツォ楽章。ヴァイオリンによる旋回モチーフと、低弦のピチカートが交互に現れ一気に盛り上がっていく。トリオはワルツの雰囲気でヴィオラが軽快なメロディーを奏でる。
 第4楽章 アレグロ、ニ短調、2/2拍子。3つの主題をもつソナタ形式。改訂される度に短縮され、第2稿から第3稿で再現部が大幅に削除された。最後に冒頭楽章のトランペット主題が登場し力強く終わる。

作曲年代:[第1稿]1872年秋~1873年12月31日 [第2稿]1876年5月~1877年4月 [第3稿]1887年~1889年3月
初演:[第1稿]1946年12月1日、ドレスデン、ヨーゼフ・カイルベルト指揮 [第2稿]1877年12月16日、ウィーン、作曲者自身の指揮 [第3稿]1890年12月21日、ウィーン、ハンス・リヒター指揮

(西村 理)