ニルセン (1865 - 1931)

交響曲 第2番 ロ短調 作品16「4つの気質」(約34分)

 デンマークのニルセンは、同年生まれであるフィンランドのジャン・シベリウス(1865~1957)とともに北欧を代表する作曲家である。6曲の交響曲のほか、多岐にわたるジャンルの作品を残した多作家である。
 《交響曲第2番》は、スヴェンセンやブラームスの影響がみられる《第1番》から約10年後に書かれた。10年以上にわたる王立劇場管弦楽団第2ヴァイオリン奏者としての活動を通じて、管弦楽法に精通した実りといえよう。ちょうど《歌劇「サウルとダビデ」》が完成しようという頃に着手。このオペラと《交響曲第2番》は性格描写が際立つ点で共通する。
 《第2番》についてはニルセン自身がプログラム・ノートを執筆している。それによると、シェラン島のとある居酒屋に立ち寄った彼は、壁にかかった絵を見てインスピレーションを掻(か)き立てられたという。そこに描かれていたのは、胆汁質、粘液質、憂鬱(ゆううつ)質、多血質の4つの気質を持った男のコミカルな様子。そもそも4つの気質は古代ギリシアの医者ヒポクラテス(前460頃~前375頃)が4種類の体液と人間の性格を結び付けて唱えた説に由来する。ニルセンは絵の描写を意図したのではなく、4つの気質を各楽章の基本性格に据えて音楽的に描き分けたのである。
 第1楽章 アレグロ・コッレリーコ(短気で激しやすい性格の胆汁質)。この性質は強奏で荒々しく流れ出る第1主題で表現されるが、3/4拍子に変わるとまもなくオーボエで第2主題が歌われる。ソナタ形式をとるが、展開部、再現部においてもモチーフは目まぐるしく活発に変化し、攻撃的な側面を表すように奔流となって突き進む。
 第2楽章 アレグロ・コモド・エ・フレマティコ(冷静で感情の起伏が見られない粘液質)。構想中に浮かんだ青年の姿をイメージしたとニルセン自身が述べている。前楽章とは対照的に、6/4拍子のワルツ風のリズムが淡々と刻まれていく。一度だけフォルテの箇所が思わせぶりに現れるが、すぐに青年のまどろみの中に溶けていく。
 第3楽章 アンダンテ・マリンコーリコ(内気で生真面目、心配性な憂鬱質)。下行音形を基本とする、息の長い重苦しい旋律が続く。中間部では木管楽器によってやや明るい兆しを見せる。
 第4楽章 アレグロ・サングイネオ(快活で社交的、気分が変わりやすい多血質)。跳躍と付点リズムが弾むロンド主題で、おどけた楽天的性格が描かれる。穏やかで対位法的な中間部をはさみ、決然とクライマックスを築いて曲は締めくくられる。

作曲年代:1901~1902年
初演:1902年12月1日、コペンハーゲン、デンマーク・コンサート協会のコンサート、作曲者自身の指揮

(山本まり子)