ハイドン (1732 - 1809)

交響曲 第104番 ニ長調 Hob.I‒104「ロンドン」(約30分)

 ハイドンは40年近くにわたり、旺盛な探求心と独創的精神をもって交響曲を作曲した。その変遷はジャンル自体の成熟過程を表している。
 1790年、エステルハージ侯爵の死去によって29年間の宮仕えを終えたハイドンは、ロンドンでコンサートを主宰していたザロモンの誘いに乗って海を渡った。市民層に音楽が定着し、楽譜出版やコンサートなどの経済活動も活発だったロンドン。ザロモンのオーケストラは充実した陣容を誇っており、すでに確固たる人気と名声を獲得していたハイドンは思う存分腕を振るうことができた。
 この時代の12の交響曲は主題の処理と楽器法において、それまでの作品の総決算ともいうべき所産であり、《第104番》はその終着点に位置する。「ロンドン」という呼び名は後につけられた愛称で、作曲地を表す以外の意味はない。
 第1楽章 ニ短調、4/4拍子の荘重な序奏(アダージョ)から、ニ長調、2/2拍子の主部(アレグロ)へと続くソナタ形式の楽章。提示部第1主題は、イ長調へ転調すると木管楽器によって展開的に扱われ、弦楽器とフルートの第2主題へと続く。展開部では主に第1主題のリズム動機が使われ、定石通りに主調で各主題が再現される。
 第2楽章 3部形式(アンダンテ)、2/4拍子。穏やかな表情を見せるト長調の主部に対し、中間部は一転してト短調で劇的な色合いを見せる。
 第3楽章 メヌエット、3/4拍子。舞曲に由来するはずのメヌエットがアレグロで書かれている。ニ長調のメヌエット部分と、変ロ長調で始まり木管が活躍するトリオからなる。
 第4楽章 ニ長調、2/2拍子。「スピリトーソ(機知をもって)」と書かれたソナタ形式のフィナーレ。持続低音の上で奏される民謡調の第1主題、弦とファゴットによるカノン風の第2主題が展開部でも順に扱われ、最後は第1主題で華やかに締めくくられる。

作曲年代:1795年
初演:1795年5月4日の慈善コンサート、ロンドン

(山本まり子)