バッハ(ウェーベルン編)

リチェルカータ (約8分)

 ウェーベルン(1883~1945)はバッハ(1685~1750)の対位法をとりわけ好み、その構造への関心は、無調や十二音技法へと進んでも、彼の音楽の基礎となった。指揮者としても活動していたウェーベルンは、1929年にウィーンの労働者交響楽演奏会でシェーンベルクがオーケストラ編曲したバッハの《前奏曲とフーガ「聖アン」》(BWV552)を指揮した。ウェーベルンは師のバッハ編曲に刺激を受け、徹底的に研究した。そして、ウニヴェルザール出版社から依頼された、シューベルトのピアノ曲《6つのドイツ舞曲》の編曲を終えた時、次の編曲作品としてウェーベルン自ら選んだのが、バッハの《音楽の捧げもの》(BWV1079)のなかの《リチェルカータ》であった。
 《音楽の捧げもの》は、晩年のバッハが1747年にフリードリヒ大王から提示された自作の主題に基づいて作曲した曲集である。曲順もはっきりせず、楽器編成もほとんどの曲で指定がなされていない不思議な曲集である。ウェーベルンは《リチェルカータ》編曲で、彼独自の響きの世界を築き上げている。
 冒頭で提示される主題はひとつの楽器ではなく、複数の楽器によって分担される。トロンボーンの後、ホルンからトランペットと主題が受け継がれていくが、そのことによって主題に含まれる短2度(半音)下行が際立って聴こえてくる。そして分解された主題は提示の度に、楽器の組み合わせが異なり、万華鏡のように変化していく。

作曲年代:[原曲]1747年夏 [編曲版]1934年11月~1935年1月21日
初演:[原曲]不明 [編曲版]1935年4月25日、ロンドン、編曲者自身の指揮

(西村 理)