ヨハン・シュトラウスII世 (1825 - 1899)

ポルカ「クラップフェンの森で」作品336(約5分)

 ウィーンを活動の中心地としていたヨハンだが、この街での仕事が減る夏のバカンス・シーズンには(ダンス音楽の作曲家であった彼にすれば、舞踏会が頻繁に開催される冬の謝肉祭シーズンこそ稼ぎ時であり、その逆で夏は大きな収益を見込めなかった)、ロシアのパヴロフスクへ毎年のように演奏旅行をおこなっていた。そして彼の地で催す演奏会に際しては、毎回のように新曲をお披露目し、聴衆の心をわしづかみにしていったのだった。
 本作は、そんなパヴロフスクでの演奏会のために書かれた作品。もとは「パヴロフスクの森で」というタイトルが付いていたが、帰郷後ウィーンでも上演するにあたって、現在のものへと改めた。「クラップフェンの森」とは、ウィーン西部に広がるウィーンの森の一部の名前であり、またそこに店を構える山小屋風レストランの名前としても知られていた。
 曲は、ポルカ・フランセーズ(フランス風ポルカ)の様式で書かれている。ポルカとは元来、チェコ西部のボヘミアで盛んだった、弾むような2拍子の民族舞踊。だが、ウィーンを都とするハプスブルク家がボヘミアを含む巨大な領土を中央ヨーロッパ各地に有していたこともあり、ウィーンでもポルカは人気のダンス音楽となってゆく。しかもそこへさまざまなアレンジが加えられてゆくわけだが、そのひとつこそがゆったりとしたテンポに乗り、優美な旋律が紡ぎ出されるポルカ・フランセーズだった。

作曲年代:1869年
初演:1869年9月6日、作曲者自身による指揮、パヴロフスク、ヴォクソール・パビリオン

(小宮正安)