矢代秋雄 (1929 - 1976)

ピアノ協奏曲(1967)(約27分)

 矢代秋雄は東京音楽学校作曲科で学んだ後、フランスのパリ国立高等音楽院でトニ・オーバン他に師事した。1956年の帰国後は日本フィルシリーズ第1作《交響曲》(1958)、NHK交響楽団の委嘱作《チェロ協奏曲》(1960)、大原美術館委嘱による《ピアノ・ソナタ》(1961)などを作曲したが、完成度の高い作品を求めるあまり、生涯きわめて寡作(かさく)を貫いた。長い懐胎期間を経たこの《ピアノ協奏曲》も、それまでの作品と同じく洗練された構造と確固たる書法、そして演奏効果が追求され、矢代のピアノへの深い造詣とも相まって、現代日本を代表するピアノ協奏曲という位置を確立することとなった。第22回芸術祭奨励賞、第16回尾高賞を受賞。
 第1楽章 アレグロ・アニマート。弦の弱奏を背景にしたピアノの印象的な第1主題、ピアノがアルペッジョで伴奏するフルートによる第2主題の2つの主題をもとにしたソナタ形式の楽章。リスト《ピアノ協奏曲》やメシアン《トゥランガリラ交響曲》などの先例にならって、何か所かにソロのカデンツァが巧みに挿入されている。
 第2楽章 アダージョ・ミステリオーソ。ある種のパッサカリアといえるだろうか。ピアノ中央のC音が反復されるリズム形が楽章全体にわたってオスティナートとして繰り返される。このC音は続く部分で、ピアノのさまざまな音域に置かれていくだけではなく、オーケストラにも波及し、和音や音色を変えては反復される。全体はアーチ形の構造で、ピアノの流麗なパッセージに続く非常にドラマチックな場面を中央に持ち、最後は冒頭と同じくピアノ中央のC音が繰り返され、静寂の中に消えていく。
 第3楽章 アレグロ─アンダンテ─ヴィヴァーチェ、モルト・カプリッチョーソ。ロンド形式を主体に、ピアノのきわめて技巧的なトッカータが続いていく。金管の切分音的なパッセージや第1楽章の回想がそれに挟まれる。

作曲年代:1964~1967年
初演:[放送初演]1967年11月、中村紘子の独奏、若杉弘の指揮、NHK(同年7月スタジオ収録) [公開初演]1967年11月29日、中村紘子の独奏、森正の指揮、NHK交響楽団、「現代日本の作品の夕べ」にて(なお、この作品は第16回尾高賞を受賞し、1968年3月5、6日のN響定期公演で同じソリスト、岩城宏之指揮で再演されている)

(野平一郎)