ブリテン (1913 - 1976)

シンプル・シンフォニー 作品4 (約18分)

 20世紀イギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテンは、イングランド東部サフォーク州の海辺の町ローストフトに生まれた。母親の影響で音楽に親しみ、独学で作曲もしていたブリテンは、11歳のときノーフォークの音楽祭でフランク・ブリッジ(1879~1941)の《交響組曲「海」》を聴き大いに魅(み)せられた。ブリッジは当時、イギリスでは異端の前衛作曲家とされていたが、ブリテンは、1930年にロンドンの王立音楽大学に入学するまで、彼のもとで和声や対位法など音楽の基礎を学んだ。
 《シンプル・シンフォニー》は、音楽大学卒業目前の1934年に、9歳から12歳までに書いたピアノ曲や歌曲などの素材をもとに作曲された。各楽章にユニークなタイトルが付され、音楽からは、その才能の早熟ぶりと青年作曲家の瑞々(みずみず)しい感性が伝わってくる。
 第1楽章〈騒々しいブーレ〉 アレグロ・リトミコ。フランス起源の舞曲ブーレに由来する賑(にぎ)やかな音楽。《ピアノ組曲第1番》(1926年)による2拍子のリズムを強調した力強い導入に続いて、チェロから始まる活発な第1主題、1923年作曲の歌曲に基づく第2主題が第1ヴァイオリンに現れる。
 第2楽章〈たのしいピチカート〉 プレスト・ポッシビーレ・ピチカート・センプレ。できる限り素早くと指示され、楽章を通じてピチカートで演奏される。弱音の軽快な主題は、《ピアノのためのスケルツォ》(1924年)に基づく。中間部のトリオ(モルト・ペザンテ)の低音の規則的なリズムに支えられた民謡風の主題は、1924年作曲の歌曲からの引用で、この主題はコーダにも現れる。
 第3楽章〈感傷的なサラバンド〉 ポコ・レント・エ・ペザンテ。サラバンドは3拍子の古典舞曲。《ピアノ組曲第3番》(1925年)による息の長い美しい主題が、ヴァイオリンでしっとりと歌われる。中間部のヴィオラとチェロによる穏やかな主題は、《ピアノのためのワルツ》(1923年)から転用された。
 第4楽章〈浮かれたフィナーレ〉 プレスティッシモ・コン・フオーコ。活発な導入に続いて、《ピアノのためのソナタ第9番》(1926年)による第1主題が目まぐるしく動き、悩ましげな第2主題は1925年作曲の歌曲に基づく。2つの主題の展開に、高音からかけ下りるピチカートなど華やかな演奏効果が加わり、ニ長調で結ばれる。

作曲年代:1933~1934年
初演:1934年3月6日、ノーウィッチ・スチュアート・ホール、作曲者自身の指揮

(柴辻純子)