ラヴェル (1875~1937)

組曲「クープランの墓」(約17分)

指揮:シャルル・デュトワ
管弦楽:NHK交響楽団

 

2013年12月11日収録

© NHK

 原曲は第一次世界大戦に従軍中のラヴェルが完成させた6曲からなるピアノ組曲。ラヴェルは1919年にそこから4曲を選び、小編成の管弦楽曲に編曲した。日本語で「墓」と直訳されるタイトルの“tombeau”は多義的な意味をもつ語だが、バロック時代のフランスの詩や器楽でよく用いられた「失われたものへの追悼」という意味で解釈すべきである。バロック時代の“tombeau”はリュートやクラヴサンなどさまざまな楽器が使用され、ほとんどが単一楽章でひとりの故人に捧げられているが、ラヴェルの《クープランの墓》は4曲(原曲は6曲)からなる。この組曲は大戦で戦死したラヴェルの6人の友人たちへ捧げられているものの、1914年の時点でほぼ書き上げられていた事実を踏まえると、友人たちへの想いが構成に大きな影響を与えたとは思われない。結局のところ、ラヴェルは作曲にあたり17~18世紀のフランス・クラヴサン音楽の典雅な舞踏組曲の響きを念頭に置きながら、その枠内であくまでも自身の独創を追究したといえる。全体は舞踏組曲の擬古的な様式、バロック風のアクセント、装飾法などを借用しつつ、それらが斬新(ざんしん)な音響をまとうことで、17~18世紀を芸術的に夢想する20世紀の作品に仕上がっている。
 第1曲〈前奏曲〉冒頭は、ピアノ版では右手で奏される無窮動風の音形がオーボエとクラリネットにより古風な趣が添えられ、徐々に色鮮やかな音響像を作り上げていく。第2曲〈フォルラーヌ〉は北イタリアからフランス宮廷に紹介された舞踏。最後に全音音階と8音音階のコントラストが手際よく形成されるなど、新旧の要素が洗練された形で並存している。第3曲〈メヌエット〉の旋法的なフレーズや和声、均整の取れた構造は初期の《古風なメヌエット》から続くもの。第4曲〈リゴードン〉は南仏の民俗舞踊に由来する。カンプラやラモーを思わせる力強い生命力に満ちたリズムと、中間部の牧歌的な旋律が対照をなす。

作曲年代:原曲のピアノ曲は1914~1917年、管弦楽編曲は1919年
初演:[原曲]1919年4月11日、パリ、マルグリット・ロンのピアノ、サル・ガヴォー [管弦楽編曲版]1920年2月28日、ルネ・バトン指揮、パドルー管弦楽団

(関野さとみ)