ヒンデミット (1895~1963)

木管楽器とハープと管弦楽のための協奏曲 (約16分)

 第二次世界大戦終結後、ヒンデミットは祖国ドイツから来たさまざまなポストの打診を断り、引き続きアメリカに留まる。1948年春にコロンビア大学から翌年5月のアメリカ現代音楽による音楽祭のために作品を依頼される。すでに「アメリカを」代表する作曲家とみなされていたヒンデミットはこの委嘱に喜んで応える。生まれたのはバロック時代のコンチェルト・グロッソを想わせる、ソロ楽器群と弦、金管合奏との響きの対比、ソロ楽器間の繊細な対位法的絡み合いの生み出す妙が魅力的な、実に味わい深い明朗な作品である。また作品の初演日はヒンデミット夫妻の25回目の結婚記念日にあたっており、後述するように第3楽章には妻へのサプライズが仕掛けられている。
 第1楽章では冒頭の弦、金管合奏によるファンファーレ風のモチーフにはじまる主題が繰り返される合間に、木管楽器とハープにより透明で叙情的な旋律線が展開される。旋律はソロ楽器間で模倣し合うように対位法的に扱われ、そこに次々と不思議な音の織物が生まれていく。第2楽章は舞曲風の3拍子。4つの木管楽器がペアに分かれ、各ペアが1拍遅れのカノン(輪唱)を展開する。息の長い旋律がユニゾンで歌われる中間部を挟み、カノンは3声、最後は6声になる。第3楽章は第1楽章と同じく、金管、弦によるファンファーレ風の主題によるロンド形式。ここではクラリネットに注目!他のソロ楽器群がさまざまな音のタペストリーを織り続ける中、クラリネットは最後までひとり黙々とメンデルスゾーンの《結婚行進曲》を演奏し続ける。作曲家の妻ゲルトルートは初演の際、この夫からの思わぬ銀婚式プレゼントに気づいて驚き、感激した。演奏会の後、ナチスによる迫害から亡命生活まで苦楽を共にしたヒンデミット夫妻はニューヨークのドイツ料理レストランで25回目の結婚記念日をひっそりと祝ったとのことである。

作曲年代:1949年
初演:1949年5月15日、ソーア・ジョンソン指揮、CBS交響楽団

(中村 仁)