バルトーク (1881~1945)

弦楽のためのディヴェルティメント (約25分)

 バルトークは1930年代半ばから、小規模なアンサンブル、あるいは室内オーケストラのための作品の分野で秀作を立て続けに書く。本日最後に演奏される《弦楽器、打楽器、チェレスタのための音楽》(1936年)、《2台のピアノと打楽器のためのソナタ》(1937年)、そして《弦楽のためのディヴェルティメント》(1939年)と続く作品群だが、これらはバルトークの全創作を代表する作品であると同時に、20世紀前半に書かれた音楽の中でも最もオリジナリティにあふれ、最も密度の高いものだったと言って良い。実は、これらの作品はひとりの人物、パウル・ザッハー(1906~1999年)という20世紀最大の音楽のパトロンの委嘱によって書かれた。
 ザッハーは、スイスのバーゼルに生まれ、世界的製薬会社の相続人という財力をいかして、バーゼル・スコラ・カントルム(後のバーゼル市立音楽アカデミー)を創立し、その院長を務めるとともに、バーゼル室内管弦楽団や合唱団を組織し、自ら指揮をした人物である。バルトークとは、1929年に知り合い、深い信頼関係で結ばれることになった。バーゼル室内管弦楽団は、演奏能力という意味では決して最高水準の楽団であったわけではなかったが、ザッハーの指導のもとに入念なリハーサルを行い、バルトークにとっては理想的な演奏媒体となっていった。この《弦楽のためのディヴェルティメント》は、ザッハーのグリュイエールにある別荘で書かれた作品である。

 曲は3つの楽章から成る。第1楽章の基本はソナタ形式だが、バロックのコンチェルト・グロッソのようにソロと総奏が交代する。前後相称的なリズムも印象的。第2楽章は、3部形式。半音階的な哀歌の中からハンガリー民謡風の付点リズムが立ち上がる。そして終楽章は、村の踊りの旋律を回帰主題とするロンド形式。中間部はフーガになっており、しかもその主題は途中から反行形となる(ロンド主題自体もその後反行形で現れる)。民俗的なエネルギーと厳格な構造とを結びつけようとした意欲的な終曲である。

作曲年代:1939年夏
初演:1940年6月11日、パウル・ザッハー指揮、バーゼル室内管弦楽団

(伊東信宏)