ラヴェル (1875~1937)

古風なメヌエット (約7分)

 原曲は1895年に作曲されたラヴェル初期のピアノ曲で、最初の出版作品である。パリ音楽院の学生として自らの語法を模索していたラヴェルにとって、1895年は波乱含みの年となった。和声やピアノの試験での度重なる失敗から音楽院を退学したラヴェルは、個人的な指導を受けながら学校の外で音楽を学び続ける。その間もラヴェルの創作の筆は止まることがなく、スペインの素材を初めて使用した2台ピアノのための《ハバネラ》など、初期の重要な作品が書かれた。《古風なメヌエット》もこの《ハバネラ》と同時期の作品で、1893年に知遇を得た作曲家シャブリエの《はなやかなメヌエット》(1881年)からの影響が認められる。ラヴェルがピアニストではなく作曲の道に進むことを決意したのは、おそらく音楽院を離れていたこの時期のことであった。ピアノ曲や歌曲の作曲を通じていっそう大胆かつ前衛的な傾向を示し始めていたラヴェルが、フォーレの作曲クラスやモーツァルトなどの古典に基礎を置くジェダルジェの対位法クラスに入るために音楽院での勉強を再開するのは1898年1月のことである。
 最初期の作とはいえ、《古風なメヌエット》での擬古的な様式や旋法的な主題の使用、属和音の多用などには後年のラヴェルの個性が見出される。「古風な(antique)」という形容詞にも、過去の様式の単なる模倣というより、古典的な形態の制約の中で自らの創意を発揮するというラヴェルの作曲の指向性がすでに表れている。
 全体は前述のシャブリエのメヌエットと同じ「A─B─A’」の伝統的な形式で書かれ、中間部は穏やかな叙情に満ち、前後の部分との効果的な対照が図られている。管弦楽版はラヴェルの晩年にあたる1929年に編曲され、さまざまに異なる音色の組み合わせが試みられていながら全体として華美になりすぎず、緊張感をもった音色の対比の妙を失わない点に、ラヴェルの円熟した技法の冴(さ)えが発揮されている。

作曲年代:原曲のピアノ曲は1895年、管弦楽編曲は1929年
初演:[原曲]1898年4月18日、パリ、リカルド・ビニェスのピアノ、サル・エラール [管弦楽編曲版]1930年1月11日、ラヴェル指揮、ラムルー管弦楽団

(関野さとみ)