R.シュトラウス (1864~1949)

交響詩「ドン・フアン」作品20 (約17分)

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
管弦楽:NHK交響楽団

 

2015年2月18日収録

© NHK

 リヒャルト・シュトラウスの《交響詩「ドン・フアン」》は、作曲家の名声を決定的なものにした、シュトラウスの出世作である。
 17世紀スペインの劇作品の主人公として生み出された伝説的な色事師ドン・フアンは、その後多くの文学や音楽の題材となった。文学ではモリエール、バイロン、レーナウ、プーシキンなどに「ドン・フアンもの」の作品がある。音楽ではいうまでもなくモーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》が筆頭にあげられるが、それに次ぐ傑作は、やはりリヒャルト・シュトラウスの《交響詩「ドン・フアン」》だろう。
 シュトラウスの《ドン・フアン》は、オーストリアの詩人ニコラウス・レーナウ(1802~1850)の詩劇『ドン・ジュアン』(1844年)の読書体験から生まれた。レーナウの『ドン・ジュアン』は、19世紀のドン・フアンものの多くがそうであるように、至高の女性を追い求めながら果たせずに絶望する、典型的なロマン主義者としてのドン・フアンを描いており、主人公は女性遍歴のすえに、孤独と絶望のうちに世を去る。
 私生活ではおよそ「ドン・フアン」ではなかったシュトラウスだが、レーナウの詩に心動かされた彼は、その音楽化を思い立ち、24歳の1888年9月30日に《交響詩「ドン・フアン」》を完成させた。1890年に出版された総譜の表紙には、レーナウの詩から30行あまりが記載されている。シュトラウスが引用したこのレーナウの詩文は、大きく3つの部分からなり、第1部では女性の魅惑と快楽への激しい憧れ、第2部では女性遍歴にひた走る主人公の信条告白、第3部では理想の女性の夢破れ、孤独と絶望に沈む主人公の様子が描かれている。シュトラウスの音楽も、全体としてはそうした詩の内容に添うものだが、詩の進行を音楽が忠実に追うというのではなく、詩が内包する情緒と心理が、音楽によってより普遍的かつ昇華されたものとして表現されるのである。

作曲年代:1888年
初演:1889年11月11日、ワイマールでシュトラウス自身の指揮による

(田辺秀樹)