サン・サーンス (1835~1921)

ヴァイオリン協奏曲 第3番 ロ短調 作品61 (約30分)

 フランスの作曲家、カミーユ・サン・サーンスは生涯にわたって膨大な数の作品を残した。彼は2歳半でピアノを弾き、3歳で作曲を始めた早熟の音楽家で、1851年パリ音楽院のオルガン科で一等賞を得た後、作曲科に進んだ。自分がソリストとして演奏するために書いたピアノ協奏曲のほかに、ヴァイオリンやチェロのためにもすぐれた協奏曲を残している。ヴァイオリン協奏曲は3曲あるが、現在たびたびステージにかかるのは1880年に作曲された《第3番》である。
 この作品は名ヴァイオリニスト、パブロ・デ・サラサーテ(1844~1908)のために作曲され、彼に献呈された。サラサーテといえば、超絶技巧曲《チゴイナーワイゼン》を作曲したスペイン生まれの演奏家として知られるが、彼はマドリードで学んだ後、1857年パリ音楽院のヴァイオリン科で一等賞を得ている。1859年のサン・サーンスの《ヴァイオリン協奏曲第1番》は若きサラサーテの依頼で作曲されたものだった。
 それから20年あまり後に書かれた《第3番》はサン・サーンスの円熟期の名作のひとつ。華麗でヴァイオリニストの見せ場も多く、美しい旋律にあふれている。全体は3楽章からなる。

第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ、ロ短調、2/2拍子、ソナタ形式。冒頭、弦楽器とティンパニのトレモロに続いて、独奏ヴァイオリンがドラマチックな第1主題を力強く歌い出す。一方、ホ長調で提示される第2主題は甘美なもの。曲はこの2つの主題を中心に構成され、最後は華やかなコーダで閉じられる。
第2楽章 アンダンティーノ・クワジ・アレグレット、変ロ長調、6/8拍子、3部形式。バルカロール(舟歌)のリズムをもつ、美しい緩徐楽章。
第3楽章 モルト・モデラート・エ・マエストーソ、ロ短調、4/4拍子─アレグロ・ノン・トロッポ、ロ短調、2/2拍子、ロンド形式。ゆっくりした導入部を得て主部に入り、活発なロンド主題を軸に、華やかに曲が進む。ヴァイオリンのさまざまな技巧が随所に盛り込まれている。

作曲年代:1880年3月
初演:1880年10月15日、ハンブルクにて、サラサーテ独奏、アドルフ・ゲオルク・ベーア指揮、フィルハーモニー管弦楽団。パリ初演は1881年1月2日、サラサーテ独奏、エドゥアール・コロンヌ指揮、コンセール・デュ・シャトレ

(井上さつき)