ラヴェル (1875~1937)

ボレロ (約15分)

指揮:シャルル・デュトワ
管弦楽:NHK交響楽団

 

1999年12月1日収録

© NHK

 1928年1月から4か月におよぶ北米での演奏旅行を成功させ、世界的な名声を確固なものにしたラヴェルは、その出発前に舞踏家ルビンシテインからバレエ音楽の依頼を受けていた。アルベニスのピアノ曲《イベリア》を管弦楽編曲してほしいという内容であったが、権利問題により頓挫し、ラヴェルはスペイン風の舞踏曲を新しく作曲することにした。こうして生まれたのが《ボレロ》である。
 《ボレロ》は初期の管弦楽曲《スペイン狂詩曲》(1907~1908年)などと同様にスペインもののひとつに数えられるが、スペインの色彩の表出という点では異彩を放つ。全体を貫くボレロのリズムはまず小太鼓で、のちにフルートなどの旋律楽器で刻まれる一方、スペインの情緒を喚起するはずのカスタネットはスコアから削除されている。また、スペイン・アラブ風の主題もサックスによってジャズの色彩を加えられ、楽器法はきわめて独創的で意想外な変化に富んでいる。
 ラヴェル自身は《ボレロ》について、テンポ、旋律、和声、リズムの全てが不変であり、変化する唯一の要素は管弦楽によるクレシェンドだと説明している。音楽の主要素を反復によってパターン化し、音色の変化とテクスチュアの拡大のみで全体を構築するという大胆な発想は、まさに実験と呼ぶにふさわしい。こうした実験が広く受け入れられるはずはないというラヴェルの予想に反し、初演は大成功を収め、結果的にラヴェルの最もポピュラーな代表作として定着することになった。
 バレエ初演時のルビンシテインによる筋書きは次の通り。スペインの酒場のホールでひとりの若い女性がボレロを踊り、次第に周囲の人々が引き付けられ、最後は群舞に達する。テンポは一貫して中庸の速さに保たれ、全体は音色とテクスチュアの拡大とともにピアニッシモから全合奏のフォルティッシモへ向かう長大なクレシェンドを形成する。最後の2小節間でボレロのリズムは瓦解し、全てがその崩壊へ一気に飲み込まれる。

作曲年代:1928年7~10月
初演:[バレエ初演]1928年11月22日、パリ、ワルター・ストララム指揮、ブロニスラヴァ・ニジンスカ振付、イダ・ルビンシテイン一座、パリ・オペラ座 [演奏会形式]1930年1月11日、パリ、ラヴェル指揮、ラムルー管弦楽団

(関野さとみ)