モーツァルト (1756~1791)

ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K.466 (約31分)

 モーツァルトの協奏曲は、他のジャンルと同様に長調を主調とする作品が圧倒的に多い。モーツァルトの協奏曲全体のうち、編曲や断片を除いたすべての完成作品は37曲(注)現存するが、短調作品は今回演奏される《ピアノ協奏曲第20番ニ短調》(K.466)と《第24番ハ短調》(K.491)の2曲のみである。18世紀後半は全般的にみて長調の作品が偏愛された時代であった。1760年代から1780年代の間はとくに長調作品への傾斜が激しかったようで、主にこの30年間で協奏曲を書いた作曲家の中には、モーツァルト並に短調作品が少ない場合も多く(ヨハン・クリスティアン・バッハ、アーベル、ロゼッティ等)、短調作品を全く書いていない場合(ボッケリーニ、ヴァンハル、イグナーツ・ヨーゼフ・プレイエル等)も稀(まれ)ではない。
 以上のように考えれば、モーツァルトの短調協奏曲から特別な印象を受けることは、現代の我々のみならず、18世紀後半の聴き手にも大いにあったと想像される。作曲家側も長調作品とは違った腕の振るい方をしたに違いない。

第1楽章 アレグロ、ニ短調、4/4拍子。協奏曲のソナタ形式。冒頭はフォルテでなくピアノで始まり、主旋律がはっきりせずにむしろ曖昧(あいまい)のままに進んでいく。
第2楽章 ロマンツェ、変ロ長調、2/2拍子。ロンド形式。中間部における激情的な短調は穏やかな主要主題と極端なまでの対比を生み出す。これらは、長調の作品にはなかなか見出すことのできない特別な表現と言えるだろう。
第3楽章 アレグロ・アッサイ、ニ短調(コーダはニ長調)、2/2拍子。ロンド形式。コーダにおける長調への転換の鮮やかさも短調作品ならではである。

(注)ピアノ協奏曲が23曲、ヴァイオリン協奏曲が5曲、ホルン協奏曲が3曲(《第1番》は未完の可能性が高いので省く)、その他の管楽器のための協奏曲が4曲、協奏交響曲が1曲、フルートとハープのための協奏曲が1曲の計37曲。

作曲年代:具体的な作曲期間は不明だが、『自作品目録』の日付は「1785年2月10日」
初演:1785年2月11日、ウィーン、作曲者独奏(父レオポルトの書簡による)

(安田和信)