ストラヴィンスキー (1882~1971)

バレエ音楽「カルタ遊び」(約24分)

 ロシア・バレエ団の振付家ジョージ・バランシンはロシア・バレエ団でストラヴィンスキー《ミューズの神を率いるアポロ》のフランス初演を行ったが、その後、座長のディアギレフが亡くなり、彼は新しく創設されたアメリカン・バレエ団の振付家となった。1935年、ちょうどアメリカに来ていたストラヴィンスキーはこの新しいバレエ団のために委嘱を受け、できたのが《カルタ遊び》(カード・ゲーム)である。カードはストラヴィンスキーの人生になくてはならない娯楽であり、当時よく遊んでいたのがポーカーだったことも関係しているが、10年以上前からカードの衣装を着たバレエを構想していたという。
 舞台はカード・ルームの緑のクロス、そこで行われるポーカーのカードをダンサーが踊る。3回のディール(3部)でゲームを引っ掻(か)き回す役割を果たすのがワイルド・カードとして知られるジョーカーであり、主要ダンサーでもある。台本は息子の友人マレイエフと共同執筆され、あらすじの最後にラ・フォンテーヌの格言が記されている。「悪人とはたえず戦わなければならない。平和は結構だが、誠意なき敵を前に平和が何の役にたつというのか」。作曲当時、ヨーロッパは第二次大戦前夜といってもよい状況にあった。《兵士の物語》(1918年)の悪魔は最後に勝利したが、ここでのジョーカーは打ち負かされる。

 1回目のディール:カードが配られ(導入)、勝負がはじまる。ひとりの手札にはジョーカーがあるが、互いにストレートで打ち負かすことはできない。華やかなワルツで締めくくられる。2回目のディール:導入。ハートとスペードの行進曲。ハート、ダイヤモンド、クラブ、スペードの順に4人のクイーンのダンス。ジョーカーを持つ手には4枚のエースがあり、容易に打ち負かす。行進曲とアンサンブル。3回目のディール:導入のあと、ワルツ・メヌエット。ジョーカーがひとり目の対戦者のフラッシュに勝利する。プレストでジョーカーは最終的にハートのロイヤル・ストレート・フラッシュに敗れる。最後のダンス。

作曲年代:1936年夏、秋、最終的に12月6日完成
初演:1937年4月27日、作曲者自身の指揮により、ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場で、ジョージ・バランシン振り付けのアメリカン・バレエ団によって行われた

(三橋圭介)