バーンスタイン (1918~1990)

スラヴァ!(政治的序曲)(約4分)

 ロシア系ユダヤ人としてアメリカで育ち、20世紀アメリカを代表する作曲家、指揮者となったバーンスタイン(1918~1990)と、旧ソ連で成功を収めたものの、後にアメリカに亡命したロストロポーヴィチ。アメリカとロシアに縁を持つふたりの音楽家は、音楽を通した平和と自由を希求した点で深く共感していた。この曲は、1977年10月、盟友ロストロポーヴィチのワシントン・ナショナル交響楽団音楽監督兼首席指揮者就任を祝う演奏会のために書き下ろされた。
 「スラヴァ(Slava)」はロストロポーヴィチのファーストネーム、ムスティスラフ(Mstislav)にちなんだ愛称で、ロシア語で「栄光」を意味する。同時に、ムソルグスキーのオペラ《ボリス・ゴドノフ》にて、新たな皇帝ボリスを祝う民衆の喝采(かっさい)「栄えあれ!(Slava!)」からの引用でもある。
 浮かれた政治キャンペーンを示唆するヴォードヴィル風のおどけた旋律と、エレクトリック・ギターとソプラノ・サクソフォーンに焦点を当てた7/8拍子のカノン風旋律をもとに曲が展開。この2つの主題は、劇音楽《ペンシルベニア街1600番地》(1976年)に由来する。
 勢いよく曲が幕開けると、2つの主題が入れ替わりながら展開する。途中、テープ録音された人々の声が聴こえ、政治集会の興奮と熱狂を演出する。この録音の声の主はバーンスタインと脚本家アドルフ・グリーンら4人で、扇動的なスローガンは歓声の中に消え入る。
 その後、2つの主題がそれぞれトゥッティで演奏され、音楽の勢いはますます加速する。祝祭的な高揚が頂点に達した瞬間、「Slava!」のかけ声で劇的に締め括(くく)られる。

作曲年代:1977年
初演:1977年10月11日、ケネディー・センター(ワシントン)、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ指揮、ワシントン・ナショナル交響楽団

(高橋智子)