ラヴェル (1875~1937)

スペイン狂詩曲 (約15分)

指揮:シャルル・デュトワ
管弦楽:NHK交響楽団

 

2006年4月14日収録

© NHK

 モーリス・ラヴェルが生涯を通じて示したスペインへの関心は、同時代のフランスに流行した異国趣味とは一線を画す。バスク人の母が歌う民謡を子守唄に育ち、「スペイン音楽に最大の称賛の念を抱いている」と語ったラヴェルにとって、スペイン音楽の情熱、陰影、神秘性は深い共感を呼ぶものであった。《スペイン狂詩曲》は最初の大規模な管弦楽曲でもあるが、ラヴェルはこのオーケストラの色彩の中に、マヌエル・デ・ファリャが言うところの「母を通して理想化された形で彼(ラヴェル)が感じてきたスペイン」を溶かし込むことに成功している。自らの内にあるスペインの情景を描くことが、多彩な楽器の組み合わせから洗練された響きを生む、斬新(ざんしん)なオーケストラ書法を導き出す一因となったのである。

第1曲〈夜への前奏曲〉 ごく中庸(ちゅうよう)の速さで。イ長調、3/4拍子。冒頭の「ファ─ミ─レ─ド♯」の4音モチーフは、第3曲〈ハバネラ〉を除き作品全体を貫く。弱音器の使用や弦の分割による抑制的な音量、精妙な音色の変化が、神秘的な異国の夜を幻出させる。
第2曲〈マラゲーニャ〉 十分活発に。イ長調、3/4拍子。4音モチーフの変形が華やかなトランペットによって紡(つむ)がれ、カスタネットやタンブリンが活発なリズムでそれを彩る。
第3曲〈ハバネラ〉 十分に悠然と、緩慢なリズムで。嬰へ短調、2/4拍子。1895年に書かれた同名曲(2台ピアノ用)の編曲。2種類の物憂(ものう)げなハバネラのリズムが、さまざまな楽器で繊細に色彩付けられる。
第4曲〈祭り〉 十分活気をもって。ハ長調、6/8拍子。5つの民謡風のモチーフが、打楽器の小気味よい響きとともに生き生きと提示される。中間部で前奏曲の雰囲気が呼び戻された後、再び活気が蘇(よみがえ)り、夜の静寂を打ち破る祭りの喧騒(けんそう)のうちにフィナーレを迎える。

作曲年代:1907~1908年2月(〈ハバネラ〉の2台ピアノのための原曲は1895年作)
初演:1908年3月15日、パリ、エドゥアール・コロンヌ指揮、コロンヌ管弦楽団

(関野さとみ)