サン・サーンス (1835 - 1921)

チェロ協奏曲 第1番 イ短調 作品33

 カミーユ・サン・サーンスは1835年に生まれ、2歳半でピアノを弾き、3歳で作曲を始め、1921年に86歳の生涯を閉じるまで、さまざまなジャンルで数多くの作品を世に残した。協奏曲のジャンルでは、5曲のピアノ協奏曲をはじめ、ヴァイオリンやチェロのための協奏曲を書いている。《チェロ協奏曲第1番 イ短調 作品33》は、国民音楽協会の会長としてフランス音楽の再興に尽力していた壮年期のサン・サーンスが生み出した傑作である。
 この作品は1872年に作曲され、1873年1月19日、パリ音楽院演奏協会のコンサートで、オーギュスト・トルベック(1830〜1919)の独奏で初演され、彼に献呈された。トルベックは音楽家の家系に生まれ、パリ音楽院で学んだチェリストで、古楽器収集家としても知られた。
 この《チェロ協奏曲》の初演は好評であった。初演時の『ルヴュー・エ・ガゼット・ミュジカル』誌によれば、終わり近くの独奏チェロのハーモニクスによる音階の部分で不幸なミスがあったため、聴衆の熱気が少し冷めたというが、作品自体は、「美しくすぐれた作品で、すばらしい情感、完璧な首尾一貫性を備えており、いつもながら、形式は非常に興味深い」と賞賛された。
 サン・サーンスのチェロ協奏曲には《第1番》のほかに《第2番 ニ短調 作品119》(1902年)があるが、現在「サン・サーンスのチェロ協奏曲」といえば、作品33の《第1番》というのが一般的であり、チェリストの重要なレパートリーとなっている。
 曲は3つの部分から構成されているが、全体は続けて演奏される。
第1部 アレグロ・ノン・トロッポ―アニマート―アレグロ・モルト―テンポ・プリモ 2/2拍子。急速な3連符による激しい第1主題と、ヘ長調で始まる叙情的な第2主題を中心に、ソナタ形式で構成されている。
第2部 アレグレット・コン・モート 変ロ長調 3/4拍子。コン・ソルディーノ(弱音器付き)の弦楽を伴奏とする典雅な音楽。メヌエットのリズムで書かれている。
第3部 テンポ・プリモ―少し速度を抑えて―第1部のようにピウ・アレグロで―モルト・アレグロ 2/2拍子。テンポ・プリモの部分は、第1部の急速な3連符の主題が現れた後、シンコペーションによるイ短調の第1主題、ヘ長調で独奏チェロが朗々と歌う第2主題を中心に、ソナタ形式を構成してゆく。そして3連符の主題が再び登場した後に、イ長調で明るく閉じられる。

作曲年代: 1872年
初演: 1873年1月19日、エドゥアール・デルドヴェーズ指揮、パリ音楽院演奏協会定期演奏会(1月26日に同じプログラムで再演)、オーギュスト・トルベックの独奏

(井上さつき)