アイネム (1918~1996)

カプリッチョ 作品2(1943)(約10分)

 ナチスによるオーストリア併合時代、《カプリッチョ》の成功で本格的な楽壇デビューを果たしたゴットフリート・フォン・アイネムは、ザルツブルク音楽祭の音楽監督などを歴任し、第二次世界大戦後のオーストリア音楽界の再建に貢献した。彼の明瞭な作風は、無調や十二音技法で知られる新ウィーン楽派の系譜の外にあり、モーツァルトやヨハン・シュトラウスII世(「リヒャルト」ではなく)に遡(さかのぼ)る伝統的なウィーン音楽を継承した一面を見せる。
 1941年から1943年までアイネムはボリス・ブラッハーに作曲を学んだ。《カプリッチョ》はその成果の集大成ともいえ、めまぐるしく変化する拍節はブラッハー直伝だろう。緻密(ちみつ)な主題操作とオーケストレーションには、ストラヴィンスキーからの影響がうかがえる。
 5部からなるロンド形式。第1、3部は基本主題とその変奏。第2、4部は新たな主題の展開。第5部はこれまでの主題を統合し、さらに発展させたコーダの性格を持つ。
 第1部は下行音型による輝かしい主題で始まる。随所に聞こえるファゴットと金管楽器はこの主題の断片を引きのばした音型。第2部ではクラリネットのおどけた旋律が聞こえ、「カプリッチョ」らしい自由な雰囲気に。クラリネット、ホルン、チェロのトリオが徐々に管弦楽全体に拡大して第3部へ。第3部は第1部を再現した短い推移部。イ短調の第4部では、アダージョでヴァイオリンが叙情的な旋律を奏でると同時に、弱音器を付けた金管楽器による短い音型が反復される。後半はスタッカートで刻まれるリズムと、なだらかな下行音型が対照をなす。第5部もイ短調だが、次第に第1部を想起させる主題が姿を現し、ハ長調に回帰する。強烈なリズムでたたみかけた後、劇的なクライマックスを迎える。

作曲年代:1942~1943年
初演:1943年3月12日、ベルリン、レオ・ボルヒャルト指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

(高橋智子)