ベルリオーズ (1803 - 1869)

歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲 (約8分)

 《ベアトリスとベネディクト》はフランスの作曲家エクトル・ベルリオーズがシェークスピアの喜劇『から騒ぎ』にもとづいて作曲した2幕のオペラ・コミックで、彼にとっては最後のオペラ作品となった。男女がお互いに恋することを軽蔑(けいべつ)しながら、周囲の人々のわなにかかって、他愛もなく恋に落ちるというあらすじである。
 このオペラはバーデンバーデンの劇場とカジノの支配人だったエドゥアール・ベナゼからの依頼で作曲された。ドイツの温泉地バーデンバーデンは当時フランスとロシアの貴族のお気に入りの保養地で、多くの人々が来訪したことから、音楽の重要な中心地となっていた。1862年2月オペラは完成し、同年8月9日、バーデンバーデンで初演が行われ、演奏にはストラスブールの劇場の合唱団が参加した。初演は成功を収め、ベルリオーズを非常に喜ばせたが、パリでの上演の話はなかなかまとまらず、オペラ・コミック座でパリ初演されたのは、ベルリオーズ没後の1890年になってからのことだった。
 序曲は、オペラのなかで登場する旋律をちりばめて作られている。全体は3部分からなり、序奏部の短いアレグロ・スケルツァンドに続いて、アンダンテとなり、主部のアレグロへと続く。
 冒頭のアレグロ・スケルツァンドはト長調、3/8拍子。活気に満ちた軽やかな主題が印象的である。この主題は主部アレグロで第1主題へと発展する。続くアンダンテは、ウン・ポーコ・ソステヌート、ハ長調、3/4拍子。クラリネットが旋律的なモティーフを奏し出し、続いて、弦楽器が半音階的に下行する。この半音階的に下行する主題は、主部アレグロの第2主題を準備する。
 主部のアレグロはト長調、2/2拍子、ソナタ形式。第1主題は、冒頭のアレグロ・スケルツァンドで現れた主題をもとに、小ファンファーレ風の音型を付加したものであり、第2主題は、アンダンテで現れた下行主題と関係しつつ、息長く歌う主題となっている。
 序曲を通じて、ベルリオーズ特有の繊細なオーケストレーションが見られる。

作曲年代:1860年から1862年にかけてオペラを作曲。1862年2月25日に序曲完成
初演:1862年8月9日、バーデンバーデン(オペラの初演)。ベルリオーズ自身の指揮による

(井上さつき)