リスト (1811~1886)

交響詩「レ・プレリュード」

 ロマン派は、音楽で想念や心象風景を表現する「標題音楽」を開花させ、リストは文学や絵画作品を表現する13曲の交響詩を書いた。そのひとつ《レ・プレリュード》は、フランスの詩人ジョゼフ・オートランの詩による男性合唱曲《四大元素》の序曲として構想され、手直しを経て独立した交響詩になったとされる。《レ・プレリュード》の2つの主題とトランペットのモティーフは、〈北風〉〈大地〉〈波〉〈星々〉の4部からなる《四大元素》(1844~1845年作曲)にすでに含まれていた。そして1854年のワイマールでの初演、1856年の出版までに、フランス・ロマン派の詩人ラマルティーヌの『新瞑想詩集』(1823年)にちなむ文章が添えられた。その内容を要約すると次のようになる。「人生は、死が冒頭の厳粛な音を奏でるあの未知の歌への前奏曲ではないのか。愛の幸せは嵐に遮られ、人は野の静寂の中に思い出を鎮める。だがやがてトランペットが鳴ると闘いに馳(は)せつけ、そこで自分を知り、試そうとする」。末尾にはリストの名があるが、恋人や弟子が書いたテクストの書き換えだという説もあり、曲も標題テクストも、実際にラマルティーヌの詩と深い関係をもつのかどうか問われてきた。
 リストの《レ・プレリュード》は、第1部:死へと向かう人生のはじまり―愛、第2部:嵐(苦悩)、第3部:田園、第4部:闘いという「緩・急・緩・急」の構成を持つ。ラマルティーヌの詩では、愛、苦悩、闘い、田園という主題が連なっていく。後半の順番こそ違え、異なった性格をもつ4場面が移行部分をはさんで途切れなく続く構成が類似している。ただしリストの交響詩は、主題を次々と変形していくことで驚くべき曲調の変化を生み出し、聴く者を新たな風景に導いていく。そして、ラマルティーヌの詩にも響くトランペット、ハープ、シンバル、牧歌的な笛の音など、各楽器の音色の対照とグラデーションが、変幻自在な主題と絡み合う。一主題を変容させる書法と、大胆かつ繊細な音の色彩感が、連続性をもちながらも対比に満ちた作品、時に内密で時に壮大なヴィジョンを支えている。

作曲年代:1848~1854年
初演:1854年、ワイマール、作曲者自身の指揮による

(博多かおる)