プーランク (1899 - 1963)

グロリア

 フランシス・プーランクはさまざまな顔をもった作曲家である。生粋のパリジャンだった彼は、都会的なもの、繊細かつセンスのよい物を好んだと同時に、当時のパリの猥雑(わいざつ)な日常文化をこよなく愛した。フランス・バロック風のチェンバロを用いた作品を書いたかと思えば、かのジャン・コクトーの詩をテキストに、カフェ・コンセールの喧騒の中で歌われるシャンソンも書いたりしたのである。
 幼い頃からピアノを習っていた彼は洒脱なピアノ曲を数多く残したが、さまざまな楽器のための器楽作品にもとりくみ、とりわけ管楽器への愛着も感じさせる。さらに同時期の作曲家たちがあまり手を染めなかったジャンル、宗教作品に力を入れたのも特徴だろう。宗教曲の中にも雑多な響きや都会の喧騒といった異質な音空間を取り込み、宗教作品の中に聖と俗が同居しているといった独特の雰囲気をもつ作品すら残している。
 クーセヴィツキー財団の委嘱によって1959年から翌年にかけて書かれた《グロリア》には、そうしたプーランクらしい一面が感じられる。テキストはラテン語で神への讃美を歌う内容だが、全6曲の中に、オペラさえ想起させる華やかで豊潤な管弦楽法、劇的でリズミカルな合唱などを配置し、宗教曲よりもむしろ劇的オーケストラ作品といえるような作風が貫かれている。第2曲の〈われらは主をほめたたえる〉は、金管の華やかな序奏に続く、快活なリズムによる合唱。第3曲はソロによる清冽な宗教曲といった感じだが、第4曲ではくっきりとした色彩感の濃い曲になる。さらに第6曲はオーケストラと合唱、そしてソロがオペラのフィナーレのような華麗な対話を展開する。プーランク自身も、この曲が宗教曲風ではない一面をもっていることを意識していたようで、「コラールの大交響曲」と称していたという。

作曲年代:1959年~1960年
初演:1961年1月20日、ボストン。アデーレ・アディソンのソプラノ、シャルル・ミュンシュ指揮のボストン交響楽団、プロ・ムジカ合唱団

(伊藤制子)