NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

惑星発見の時代

福江翼

惑星発見の時代

 

太陽系の惑星

 星はみずから光り輝きながら宇宙を漂っている。惑星は、そのような星のまわりを周っている。星の光に照らされて惑星には昼や夕闇がもたらされる。わたしたち人類は、そのような惑星のひとつに住んでいる。

 わたしたちを照らす太陽のまわりには、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、これら8個の惑星が知られている。これらのうち地球から最も遠く、最後に見つかったのは海王星であり、その発見は19世紀のことだった。《組曲「惑星」》で知られる作曲家のホルストが生まれる直前の時期であった。

 

太陽系の8個の惑星と地球の月 ©NASA

太陽系の8個の惑星と地球の月
©NASA

 

惑星は宇宙にいくつある?

 現在は、太陽系の外に惑星が次々と発見される時代となっている。それらは「太陽系外惑星」、略して「系外惑星」と呼ばれる。望遠鏡による探査の結果、2017年10月現在、系外惑星の数は、その候補まで含めると3000個を超えており、現在も新たな系外惑星の探査が続いている。なお、系外惑星は宇宙では基本的に暗く小さな存在のため、 望遠鏡で見つけるのは簡単ではない。現在の技術によって見つかっている系外惑星は、実際に宇宙に存在するうちのごく一部と考えられる。

 わたしたちの太陽は、「天の川銀河」の星々のひとつである。近年の観測による見積もりでは、それぞれの星には平均的に少なくとも1個ほどの系外惑星を伴うと予想されている。一方、天の川銀河にはおよそ1000億個相当の星々が集まっていると推測されている。従って、天の川銀河には系外惑星が1000億個もしくはそれ以上漂っているのかもしれない。そして、この宇宙には天の川銀河の他にも多くの銀河が存在していることを考えれば、系外惑星の数は想像を絶するだろう。

 

天の川銀河は渦巻銀河の一種と考えられている。画像は渦巻銀河 M81 ©国立天文台

天の川銀河は渦巻銀河の一種と考えられている。画像は渦巻銀河 M81
©国立天文台

 

 はたしてこの宇宙で、こんなにも多くの惑星がどのように作られるのだろうか。この宇宙では、たくさんの星雲の姿が望遠鏡によって写しだされてきた。さらに、これら星雲の中には、円盤のような形をした雲が多数見つかっている。それらの雲は、塵(ちり)とガスが集まってできている。塵やガスは重力によって周囲の雲を引き寄せながらさらに濃く集まっていくこともある。その結果、こういった場所のあちこちで、やがて星や惑星が誕生すると考えられている。この宇宙では、惑星はとてつもなく多くの場所で生まれる機会があるのだ。

 

オリオン星雲 ©国立天文台

オリオン星雲
©国立天文台

 

「第2の地球」の条件は?

 さて、すでに見つかっている系外惑星を見渡してみると、実に多種多様な系外惑星が見つかっていることがわかる。木星のような巨大なタイプもあれば、地球のような小さなタイプもある。もしかすると「第2の地球」と呼べるような系外惑星も存在するのではないか、そのような期待が高まるのも自然な考えだ。

 どうすれば「第2の地球」を見つけられるだろうか。まずひとつの方法には、系外惑星の重さや大きさを調べることが有効である。たとえば木星は、巨大ガス惑星とも呼ばれるように、地球と比べると約300倍の重さを持ち、約10倍の大きさとなっている。岩石質の小さく軽い惑星である地球とは明らかに異なるタイプである。「第2の地球」を探すためには、まずは地球と同じくらいの重さや大きさの系外惑星を発見することが足掛かりとなる。

 次の条件に、地球に見られる海のように、系外惑星に「液体の水」が十分に存在できうるかが挙げられる。系外惑星が中心の星に近すぎて灼熱の世界となると水が蒸発する恐れがあるし、中心の星から遠すぎると冷たい氷の世界になるかもしれない。系外惑星が中心の星から適度な距離に位置している方が液体の水が存在しやすいように考えられる。

 そのような領域に、地球と同程度の重さや大きさの系外惑星を探すことが、「第2の地球」を探すという目標には、理にかなう調査方法と言えるだろう。

 

「トラピスト1」惑星に地球外生命体はいる?

 地球のような系外惑星は特に小型なので観測が難しいのだけれども、近年の観測の進展により、地球の重さや大きさに近い系外惑星がいくつも発見されるようになった。その中でも「トラピスト1」と呼ばれる星の周囲の系外惑星が最近のニュースで注目されたのは、中心の星からの距離が適度な場所にあり、地球と同程度の大きさの系外惑星であるとの報告だったからであろう。

 一方で、宇宙の星々は太陽と似ていることもあれば、太陽とは異なる光を放って系外惑星を照らしていることもある。多様な星の光が系外惑星にどのような影響を与えるかも慎重に調べる必要がある。たとえば星からの紫外線は惑星の大気の状態や、惑星に住む生命に大きな影響を及ぼしうる。仮に系外惑星が中心の星から適度な場所に存在したとしても、星からの光の影響次第では系外惑星から水が失われていく可能性も考えられる。「トラピスト1」についてはハッブル宇宙望遠鏡で紫外線調査なども行われており、「トラピスト1」の各惑星の状況についても現在研究が進められている。

 将来的には、地球のように酸素が存在しているかなど、「第2の地球」として十分な特徴を有しているかどうか、それらの手掛かりを求めて、系外惑星の観測はさらに詳細に進められるだろう。望遠鏡計画や研究の進展によっては「第2の地球」も見つかるかもしれない。

 

地球の海 ©NASA

地球の海
©NASA

 

参考文献
Aschwanden, M. J., 2018, New Astronomy, 58, 107
Cassan, A, et al., 2012, Nature, 481, 167
Sofue, Y., 2017, PASJ, 69, 1
Luhman, K. L., 2012, ARA&A, 50, 65
Papaloizou, J. C. B. & Terquem, C., 2006, RPPh, 69, 119
Gillon, M., et al., 2017, Nature, 542, 456
Bourrier, V., et al., 2017, AJ, 154, 121
Hedelt, P., et al., 2013, A&A, 553, 9
http://exoplanet.eu/



プロフィール

福江翼(ふくえ・つばさ)

神戸市外国語大学准教授。京都大学博士(理学)。京都府生まれ。専門は天文学、宇宙物理学、アストロバイオロジー。神戸大理学部物理学科卒業。京都大大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻博士課程修了。2009年国立天文台ハワイ観測所研究員。2011年第27回井上研究奨励賞を受賞。著書に『生命は、宇宙のどこで生まれたのか』がある。

 

 

オススメ・コンサート オススメ・コンサート

2018年1月27日(土)6:00pm  2018年1月28日(日)3:00pm

第1878回定期公演Aプログラム NHKホール

ベートーヴェン/「エグモント」序曲

ジョン・アダムズ/アブソリュート・ジェスト(2011)*[日本初演]

ホルスト/組曲「惑星」作品32**

指揮:ピーター・ウンジャン

弦楽四重奏:セント・ローレンス弦楽四重奏団*

女声合唱:新国立劇場合唱団**

 

 

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