NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

永峰 高志

永峰 高志

第2ヴァイオリン首席

ながみね・たかし

東京都出身。1980年、東京藝術大学を卒業。同年、大学の推薦により「NHK・FM新人演奏会」に出演。ヴァイオリンを鷲見三郎、鷲見健彰、福元裕、田中千香士の各氏に師事。1980年10月1日入団。第2ヴァイオリン首席奏者。ソロ・リサイタルの開催や、TV、FM公開放送へ数多く出演。アマチュア・オーケストラの指導、弦楽専門誌『ストリング』への連載など、様々な分野において積極的に活動し、洗足学園音楽大学、東京藝術大学では後進の指導にあたっている。

 

将来のお客様に、まず音楽を好きになってもらう種まきを

黒崎

永峰さんは首席奏者として第2ヴァイオリンを引っ張っていかれる立場ですが、何か意識されていることはありますか?

 

永峰

指揮者によっても違いますが、私が迷ってはいけないということですね。例えばチェロが刻んでいて、第1ヴァイオリンがメロディを歌っているとき、どちらかにつかなければならないとしたら、必ずしも第1ヴァイオリンにつけるわけではないんです。どこを基本にしてどこに合わせていくか、ということですね。また、私たちは内声でいつも刻みをやっていますが、音楽の方向性を示すという役割もあります。家で言うと、その時その時の土台に乗ってどんな柱を作るか、そういうことをライブで瞬時に判断していかなればなりません。

 

黒崎

毎回同じではないんですね。

 

永峰

本番はいつも必ず何か起こります。だから面白いんです。人間がやるものですから気分が高揚してくるでしょう。指揮者だって私たちだって、一つの音楽の中で、感じが変わってきます。

 

黒崎

その手綱さばきがリーダーであることの面白さでしょうか?

 

永峰

判断を間違ったらアウトですから、ものすごいストレスはあります。今どこのパートを聴いてるぞという意識を、明確に合図で示すようにしています。本番では口に出して言うことはできないですからね。みなさんプロフェッショナルですから、それについてきてくれます。すごく協力的なセクションで、私もこのセクションが大好きなんです。

 

黒崎

第1ヴァイオリンからセクションを移られたそうですが、どんなところが違いますか?

 

永峰

仕事の内容が全然違います。例えて言えば、ファーストは跳び箱を跳ぶ人です。セカンドはその横を走って行って、跳ぶ瞬間にハイと言って踏み切り板を差し出す人。そのタイミングがずれると跳べるものも跳べなくなります。だから普通に物事が進んでいる状態が良い状態です。弦楽四重奏でも同じですが、セカンドのテンポ感が変だとファーストの音程が悪くなります。上手に弾けていればうまくサポートできているということです。

 

黒崎

3歳からヴァイオリンを始められたそうですが、子供の頃は科学方面の勉強がしたかったとか。

 

永峰

小さい頃は電気が好きでラジオを作ったり。今でもオーディオが好きで、多少こだわりはあります。昔は高くて手が出せなかったけれど20 年経った中古なら少しは買いやすくなったかなと(笑)。

 

黒崎

N響で印象に残っている演奏はありますか?

 

永峰

今年4月のメータさんとの震災チャリティー・コンサート。30年間N響に在籍して、《第9》もずっと弾いていますが、私にとってはベストの出来でした。被災地の方に直接聴いていただくことはできなかったですけれど、私たちにできることは演奏することですし、思いは通じたと思います。他には、ギュンター・ヴァントさんとのブルックナー《第4番》や、マタチッチさんとのブルックナー《第8番》が印象に残っています。

 

黒崎

どういったところが?

 

永峰

本当にすごい指揮者には、ついていける信頼感があるんです。

 

永峰

存在感もそうですし、結局は確かな技術に裏打ちされているのですが、素晴らしい才能を持っている人が指揮台に立っているというだけでも滲(にじ)んでくるものです。もちろんそういう人は指揮も上手で理にかなっています。譜面が全部意識され、オーケストラの全員がみんな自分のことを見ていると思わせるものがあるのです。

 

黒崎

N響の演奏会以外で大事にされている活動はありますか?

 

永峰

オルガンと共演したり、室内楽もやりますが、それとは別に大切にしているのは、小学生や中学生を対象にした音楽鑑賞教室です。弦楽四重奏で演奏して、お話もします。N響の演奏会の仕事もとても重要ですが、将来のお客様を作るために、まず音楽を好きになってもらう種まきも大事ですからね。

 

文 ― 柴辻純子 / 写真撮影 ― 松井伴実
「フィルハーモニー」2011年10月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

黒崎めぐみ

聞き手

黒崎めぐみ

くろさき・めぐみ

NHKアナウンサー。神奈川県横浜市出身。東京大学卒業。1991年NHK入局。これまでに「紅白歌合戦」、「生活ほっとモーニング」、「世界びっくり旅行社」などの番組を担当。2006年、2007年、2009年にNHKホールで行われた「N響ほっとコンサート」では司会を務めた。2011年4月から2012年3月まで「N響アワー」に出演。趣味は舞台芸術鑑賞。