NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

山田雄司

山田雄司

ヴィオラ

やまだ・ゆうじ

東京都出身。東京藝術大学音楽学部器楽科ヴィオラ専攻卒業。同大学院修了。浅妻文樹、中塚良昭の各氏に師事。1984年4月1日入団。ヴィオラ奏者。室内楽にも取り組んでいる。

 

もっといろいろな音を出したい

華恵

ヴィオラとの出会いはどのように?

 

山田

小さい頃はヴァイオリンでした。音楽高校受験のときにヴィオラに転向して受験することになりました。そのまま藝大に行ったんですけどそこら辺からですね、楽器を弾いて生活できるといいなと思ったのは。

 

華恵

ヴィオラ奏者の面白いところはどこですか?

 

山田

ヴィオラはソリストでやっている人は少ない楽器ですから、室内楽であれオーケストラであれ、いろんな楽器と一緒に演奏することになりますよね。オーケストラだったらさらにいつも指揮者がいるし、ソリストが入ることもある。広い範囲を見渡しながら、いろいろな楽器や演奏を一緒になって味わうことができるのがいいかな。

 

華恵

音楽以外のご趣味は?

 

山田

本を読むくらい。純文学は苦手なので、歴史ものなどをよく読みますね。

 

華恵

演奏の資料として役立つこともありますか?

 

山田

音楽に役立つ本はそんなに多くないですよね。たまにヒントになるようなことはありますが。純粋に趣味として楽しんでいます。世の中よく分からないことだらけなので、本を読むと何でも面白いなと思います。音楽を仕事にしているので、音のないところで、1人で静かにしている時間を持ちたい、と最近は思うようになり、読書はそんな時間になりました。

 

華恵

N響に入って良かったこと教えてください。

 

山田

もう入団して30年近くになりますが、いい指揮者といいソリストと一緒に稽古から過ごすことができ、舞台に立つことができるという経験の積み重ねが何にも代え難いですね。

 

華恵

その経験を吸収して、ご自身の音が変わっていくということはあるんでしょうか。

 

山田

それは自分ではよく分からないんですよ。お客さまにとってみると、指揮者でオーケストラの音が変わると言われますし、ソリストが優しい音を出したらこっちも優しい音色になったりという影響を感じると思いますが。

 

華恵

入団当初と今で変わったことは何でしょうか。

 

山田

うーん、年を取ったってことでしょうね。精神的にはそんなに変わってないつもりなんですけど、だんだん身体がついて行かなくなったなと感じています。

 

華恵

そうすると演奏方法にも影響はありましたか。

 

山田

譜読みは確かに時間が掛かるかもしれないですね。でも最近はあまり新しい曲はありませんが。昔、若い頃は全部の曲が初めてだったので、ひたすら譜読みの毎日みたいな感じでした。最近はもう既に1回や2回は弾いたことのある曲がほとんどなので、昔ほどは苦労しないですよ。

 

 

 

華恵

音は変化しましたか。

 

山田

入団当初とは相当違うとは思いますね。いろいろなことができるようになってきたと思いたいですね。

 

華恵

N響に入って印象的なことを挙げるとしたら?

 

山田

もちろんいろいろありますが、指揮者のギュンター・ヴァントさんと80年代後半に演奏したときの経験は鮮烈な印象が残っています。すごく厳しい方だったんですけど、音楽づくりの内容はとても面白かったですね。マタチッチさんもすごく面白かった。1つには絞りきれないです。

 

華恵

特に好きな音楽を選ぶとするなら何ですか?

 

山田

最近はドビュッシーが好きですね。

 

華恵

それは聴き手としてですか、それとも演奏家として?

 

山田

聴き手としてです。ドビュッシーは弾くのは難しいですからね。私は弾くよりは聴く方が好きなんですよ。自分の演奏についても、弾いて誰かに聴かせたいというよりも、自分で出した音を聴くのが楽しいみたいな、そういう部分もあります。

 

華恵

演奏会に来る方々に求めることはありますか?

 

山田

若い頃は自分がこういうふうに表現したいと思ったことに共感してくれるお客さまに聴いてもらいたいと思っていたんですけど、今はそうではなくて、いろんな人の価値観で聴いてもらいたいと思っています。好き嫌いを自由に感じてもらいたいです。

 

華恵

今後、演奏家としてこういうふうに変わっていきたいというのはありますか?

 

山田

まだまだもっと上手くなるんじゃないかなと思って、努力し続けないといけないと思っています。ただそれだけです。

 

華恵

上手いというのは……。

 

山田

それは表現の幅が広がることですね。もっと幅広いいろんな音が出せるといいなとまだまだ思っています。

 

写真撮影 ― 藤本史昭

2013年5月取材 ※記事の内容およびプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

華恵

聞き手

華恵

はなえ

1991年アメリカ生まれ。6歳から日本に住む。2003年、12歳で『小学生日記』を刊行し、エッセイストとしてデビュー。NHK BSプレミアム「世界遺産~一万年の叙事詩~」でのナビゲーター、連載エッセイなど、幅広く活躍中。現在、東京藝術大学音楽学部楽理科に在学中。