NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

齋藤麻衣子

齋藤麻衣子

ヴァイオリン

さいとう・まいこ

桐朋学園大学卒業。ドイツ学術交流会(DAAD)派遣留学生、文化庁芸術家在外研修員としてフライブルク国立音楽大学に留学しドイツ国家演奏家資格課程修了。全日本学生音楽コンクール第1位。師に、原田幸一郎、ライナー・クスマウル等の各氏。2006年9月1日N響入団。

 

岩槻

とても音楽好きなご一家に育ち、齋藤さんもごく自然にヴァイオリンのレッスンを始められたそうですね?

 

齋藤

兄がヴァイオリンを習っていた時期があり、そのレッスンについて行ったところから。5歳から始めました。

 

岩槻

もうやめようかなぁ、なんて思われたことはなかったのですか?

 

齋藤

んー、好きだけど、何となく向いていないかなとか、向いているかどうかわからないけれど、好きだからもう少し続けていこうかなとか……

 

岩槻

どんなときにそう思ったのですか?

 

齋藤

これでいいのかなと、自分を振り返り見た時に。

 

岩槻

そういうことって、高校生ぐらいの時に起こることが多いのかなと思っていましたが、齋藤さんの場合もっと小さい頃からご自分を客観的に見つめていらしたわけですね。音楽家としてやっていこうと決めたのは?

 

齋藤

ヴァイオリンをずっと続けていけるかな? ずっと続けていたいなぁ、と思ってそのまま……

 

岩槻

ものすごく自然な流れのなかでヴァイオリニストになられたのですねぇ。血のにじむような練習などとは対極的な雰囲気でいらっしゃいますが。

 

齋藤

他の方に比べてしているとは、思えませんが、私は練習するだけが取り柄みたいな……。

 

岩槻

どれぐらい練習なさるのですか?

 

齋藤

だらだらと夜10時までします。

 

岩槻

じゃあ、あんまり遊んだりなさらなかったのでは?

 

齋藤

でも何となく遊んでいました。

 

岩槻

中学校時代、部活などは?

 

齋藤

しませんでした。

 

岩槻

やっぱり。その時間におけいこなさっていたのですね。

 

齋藤

はい。

 

岩槻

……尊敬します(笑)。
フライブルク音大には何年留学なさっていたのですか?

 

齋藤

5年です。

 

岩槻

結構長かったのですね。どのような経験を?

 

齋藤

ドイツ留学の経験なしに現在の私はないぐらい、かけがえのないものでした。クスマウル先生は、自分から教えてほしいとドアをノックすれば、思った以上の内容を注いでくださいました。

 

岩槻

お人柄も温かい方だそうですね。

 

齋藤

音楽に対して愛があり、ヴァイオリンを弾くことは競争ではなく、自分が持っているものを伝えてあげたいという方です。寛容で、他のヴァイオリニストの講習会にもどんどん行ってもいいよとおっしゃってくださったので、他の先生の講習会にも行きました。期待した以上の内容を注いで頂いて、感激でした。

 

岩槻

留学なさって本当に得るものが多かったのですねぇ。

 

齋藤

留学前は上がり症で、練習しても本番でよく崩れていました。クスマウル先生の大きな人柄のなかで、自分をさらけ出せるようになりました。ずいぶん変わったと思います。

 

岩槻

今でも交流を?

 

齋藤

バースデイ・カードを送っています。

 

岩槻

ドイツでなにか面白い食べ物はありましたか?

 

齋藤

イタリア産のジャポニカ米で、「日の出」という日本語の下に“SHINODE”と書かれた銘柄を食べていました。

 

岩槻

今でもN響はドイツ系のマエストロがたくさんお見えになりますが、齋藤さんにとってはドイツ語での練習は、よくお分かりになるでしょう。

 

齋藤

ドイツ語なら分かりますが、面白いのはマエストロ・サンティで、「I denke」ときて、以下その思うところの内容はイタリア語で(笑)。歌ってくださることが多いので、分かりますけど。でも、冗談をおっしゃって皆さん笑っていらっしゃるのに、イタリア語だから分からないときがあって、練習内容に直接関係なさそうに聞こえるから、そこはまぁいっかと(笑)。出身国を問わず、他の言語が混ざることがあっても基本的には日本のマエストロ以外はほとんど英語です。

 

岩槻

忘れられない演奏体験は?

 

齋藤

素晴らしい音楽に触れて涙を流すことはしょっちゅうあります。バッハの マタイ受難曲》の、オーケストラの部分でなく合唱部分で(笑)、泣くとすっきりします。悲しくて落ち込んでいるときに聴くと安心します。

 

岩槻

一種の浄化作用なのでしょうか。

 

齋藤

“素”のニュートラルに戻すというか。良くない昂ぶりも静まります。

 

岩槻

嬉しいときも悲しいときも昂ぶったときもそばに音楽があるのですねぇ!

 

齋藤

基本的には、ヴァイオリンの音が好きです。オイストラフが特に好きです。とてもやさしくて、包まれる感じがして。ヴィデオやDVDも度々見ています。

 

岩槻

私も、若いときのオイストラフには恋しちゃいそうになりました!
現役のヴァイオリニストでは?

 

齋藤

ここの部分いいな、と思う方はいますが、やはりオイストラフが圧倒的です。

 

岩槻

オフの日は?

 

齋藤

譜読みなどが常にあるので、何となく練習しています。ボーっとしながらYouTubeでハイフェッツを見たりもします。

 

岩槻

まさに正統派“素敵なヴァイオリンのおねえさん”ですねぇ。清々しい気持ちになりました。

 

写真撮影 ― 堀田正矩
「フィルハーモニー」2010年2月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

岩槻里子

聞き手

岩槻里子

いわつき・さとこ

NHKアナウンサー。愛知県出身。津田塾大学卒業、上智大学大学院博士前期課程修了。1998年NHK入局。2007年6月~2008年3月までメインキャスターを務めた「お元気ですか日本列島」では気さくな人柄が人気を呼んだ。2008年7月から「COOL JAPAN―発掘!かっこいいニッポン」のナレーションを担当。2008年4月から2011年3月まで「N響アワー」に出演。趣味はヴァイオリン。