NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

池田昭子

池田昭子

オーボエ

いけだ・しょうこ

宮崎県出身。東京藝術大学卒業。第4回津山国際総合音楽祭ダブルリード・コンクールおよび第13回日本管打楽器コンクール第1位。東京交響楽団を経て、2004年1月1日N響入団。東京藝術大学非常勤講師。

 

髙橋

オーボエの魅力は?

 

池田

感情表現を密接に音にのせられる点です。私は、切なくなったりときめいたりすることが好きで、「はぁーっ!」と揺り動かされたその感覚を、音色にのせて吹きたいのです。標題音楽に限らず、その音楽から、こういう感じの人が、こういうシーンでこういう思いをしてと、膨らんだイメージや物語のシーンを思い浮かべながら吹いています。

 

髙橋

たとえばどんなことを想像するのですか?

 

池田

フランクの《交響曲 ニ短調》第2楽章イングリッシュ・ホルンのソロの部分は、とてもインスピレーションの湧くところです。囚われて軟禁されているお姫様の心に、すでに恋心が芽生えていて、なんとも言えないその複雑な心境を、しかもバレエで踊っているという情景です。窮屈な状況だけれども、ちょっと艶っぽい……

 

髙橋

そんなことを思い浮かべながら演奏しているとは!
オーボエは「息」・呼吸と直結した楽器だけに、そうした奏者の感情が繊細に音にも反映されてくる感じがします。“楽器別人間性”ではないですが、オーボエには神経細やかな方が多いのでは?

 

池田

確かに。私などは、オーボエ界ではもっとも大雑把な部類です(笑)。

 

髙橋

リードはみなさん手作りで、隠れた苦労が多いと聞きます。

 

池田

1つに30分ぐらいかけ、いくつも作りますが、使い物になるもの、つまり表現したいことを受け入れてくれるリードはそのうち1割強です。

 

髙橋 

リード作りをするとき、まず念頭に置くことは?

 

池田

機能性もですが、今度吹く曲のイメージに合う音色を得られるかどうかです。たとえば、イングリッシュ・ホルンで、ここは2000〜3000人の観客の心を動かす「聴かせる」音にしようと思うときには、力強い音の得られるリードにしますし、ピアニッシモの役割が多いときには、きれいな弱音の得られるリードになるよう心がけます。

 

髙橋

趣味は読書だそうですが?

 

池田

特にエッセイは好きです。たとえば『三谷幸喜のありふれた生活』は、あー、奥さんのことが好きなんだとか(笑)、こんなすごい人でもカベにぶつかったりしているんだと分かって、良かったです。というのは、なんらかのカベを見つけ、それをすり抜けて、向こう側に行くことが私たちの仕事ですから。

 

髙橋

つまり、今の演奏に満足することなく、よりよい演奏のために自ら課題を見つけていくということですね?

 

池田

いろいろな方向からものを見て試行錯誤するのが好きで、諦めないし、絶対なんとかして乗り越えられると信じてやっています。
遠藤周作も好きですし、伊丹十三の『女たちよ!』はマイ・ブームを起こしました(笑)。車の運転のしかたやセーターの着方にいたるまで、「カッコイイ人ってこうなんだ!」「今日はこんな感じ!」って、生活にまで影響が及んでいます。

 

髙橋

ちなみに『のだめカンタービレ』の大ファンだとか?

 

池田

なんでも聞いてください(笑)。

 

髙橋

「黒木くん」というオーボエ奏者が登場しますね。

 

池田

あまりにもかぶりすぎて、痛いキャラクターです。あぁやっぱり黒木君もここで遊びに行かないで、リード削っちゃうんだって。

 

髙橋

読者のみなさま、黒木くんは池田さんだと思ってください(笑)。プロになろうと思われたきっかけは?

 

池田

中学校の時、宮崎にN響が来て、前から3番めの席で聴きました。《モルダウ》だったでしょうか。弦の音が出たとたん、身体にスーッとなんの抵抗もなく音が入ってきて、このオーケストラの一員なりたい、と決めました(笑)。その後、演奏してもあの時のような衝撃の感動がやってくることはなく、私の心がけがれてしまったのかと(笑)諦めていたら、N響にエキストラで来た時、あの感動が蘇ったのです。正団員になれてからは毎ステージ、今日初めてオーケストラを聴く子どもがいるかもしれない、私が体験したあの感動を得てくれるかもしれない、と思って吹いています。

 

 

写真撮影 ― 堀田正矩
「フィルハーモニー」2007年2月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

髙橋美鈴

聞き手

髙橋美鈴

たかはし・みすず

NHKアナウンサー。北海道出身。東京大学卒業。1994年NHK入局。6年間の札幌局勤務後東京アナウンス室。「おはよう日本」で朝の顔として人気を博し、現在「N響アワー」「美の壷」等で活躍中。趣味は美術や演劇鑑賞、茶道。