NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

池田幸広

池田幸広

テューバ

いけだ・ゆきひろ

静岡県出身。1998年国立音楽大学卒業。同年、大阪市音楽団入団。第15回日本管打楽器コンクール優勝(1998)、「コンセール・マロニエ21」金管部門優秀賞(1999)、マルキノキルヘン国際コンクール(独、2000)第4位および審査員特別賞。2005年5月1日N響入団。

 

髙橋

池田さんは、テューバというひときわ大きな楽器を置いたり構えたりなさるせいか、いつも素晴らしい姿勢で座っていらっしゃいますね。待ち時間の多いパートですが、どんなことを考えていらっしゃるのですか?

 

池田

音楽を楽しんでいます、なんて良い場面なんだろうと感激したりして(笑)。ドヴォルザ−クの新世界から》のように、全楽章を通してたった9小節のために出ることもありますので、待ち慣れています。

 

髙橋

テューバ・セクションは、N響としては38年ぶりの新入団でした。激戦を勝ち抜かれ、正式入団なさって2年ですが…

 

池田

日本を代表するオーケストラの、しかもたった1席のセクションの重みは思った以上にたいへんなものでした。

 

髙橋 

プレッシャーも大きい?

 

池田

毎回、本番前はお腹の調子が悪くなります、臆病な性格なので(笑)。

 

髙橋

2年経って、演奏に関してなにか変化はありましたか?

 

池田

吹奏楽ではコントラバスとともに、響きの基盤を成す低音を鳴らし、全体を支える役目が主でした。しかし管弦楽作品では、3本のトロンボーンとともに(第4トロンボーン的に)和声を形成したり、第5ホルン的に使われたり、コントラバスと同調したり、または他の金管から浮き上がらない音色を作り溶け合わせスピードを添わせて、共に旋律線や和声を動かしたりと、吹奏楽作品には要求されない使用法を作曲家たちは要求しています。必要とされるイメージは吹奏楽作品とは比較にならない多さで、作品に対応させた音色作りは、それはもうとても楽しいです。

 

髙橋

中学生のときにテューバのとりこになったそうですが、どこに魅力を感じられたのですか?

 

池田

見た目カッコワルイですよね(笑)。思春期にはやっぱり、誰が見てもかっこいいサックスをやりたかったのですが、がたいの良さを先生にみこまれまして。でもその先生が、吹奏楽にテューバがないとどうなるか、聴かせてみせてくれたのです。「こんな重要なことを、君は任されるんだよ」って。そのときの感銘が、僕をテューバの世界、音楽の世界の素晴らしさに目覚めさせてくれたのです。

 

髙橋

テューバ・セクションはたいてい、どのオケも1人。ポストの少なさに関しては、プロになることがきわめて難しいセクションだと思います。心配なさったお父様が「どうせやるからにはN響に入るつもりで頑張りなさい」と激励なさったそうですが、実際にN響に入団した時は喜ばれたのではないですか。

 

池田

そんなつもりで言ったんじゃないのにって言われました(笑)。

 

髙橋

お父様も演奏は聴きにいらしたのですか?

 

池田

ええ。いちばんのファンでいてくれると思います。

 

髙橋

素敵な親孝行ですね。諦めずに成し遂げられて…。練習場所は荒川の土手だとか。

 

池田

はい。壁がないので、音が伸びるのが分かります。狭いところですと(大きな音が出る楽器なので)セーヴしてしまい、トレーニングにならないのです。

 

髙橋

昨夏の「N響ほっとコンサート」(8/6)では、N響初の吹奏楽がありましたが。

 

池田

懐かしかったです!日本の音楽文化には吹奏楽が広く深く浸透しています。吹奏楽奏者は、編曲を通してオケ作品を知り親しんでいくのが日本のパターンなので、「N響吹奏楽」は僕としてはまたやってほしいなと。
それから、N響オーチャード定期でのヴォーン・ウィリアムズの《テューバ協奏曲》は嬉しいです。残念ながらテューバの認知度はまだまだ高いとは言えませんので。放映でもヴァイオリン・パートが映る時間の方がもちろん長いですから(笑)、うちの4歳の娘などはテレビを見て「ヴァイオリンが弾けるようになれば、お父さんといっしょに弾けるんでしょう?」と言ってくれるので感激はしていますが(笑)、テューバの可能性の豊かさもぜひ、コンチェルトなどの機会に、より知っていただきたいと思います。

 

写真撮影 ― 堀田正矩
「フィルハーモニー」2007年6月号掲載 ※ 記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

髙橋美鈴

聞き手

髙橋美鈴

たかはし・みすず

NHKアナウンサー。北海道出身。東京大学卒業。1994年NHK入局。6年間の札幌局勤務後東京アナウンス室。「おはよう日本」で朝の顔として人気を博し、現在「N響アワー」「美の壷」等で活躍中。趣味は美術や演劇鑑賞、茶道。