NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

池上 亘

池上 亘

トロンボーン

いけがみ・こう

埼玉県出身。東京藝術大学卒業。第8回日本管打楽器コンクール第3位入賞。第3回出光音楽賞奨励賞受賞。東京シティフィルハーモニック管弦楽団、東京交響楽団を経て、2001年9月より、NHK交響楽団トロンボーン奏者。国立音楽大学非常勤講師。

 

髙橋

トロンボーン・セクションは結束が強いそうですね。

 

池上

集いの盛んなセクションではあります。お昼ごはんもいっしょ、本番が終わって飲みに行くのもいっしょ。世界的にどこのオケでも、そういった傾向があるようですね。

 

髙橋

とても華やかなセクションに見えますが…

 

池上

華やかな仕事もありますが、大半は華やかではない仕事の方が多いです。映画の世界に例えれば、主役を引き立てる地味な脇役であったり、「ここで突然雷が轟く」といったことを担当する大道具さんだったりと、トロンボーンは主役ではないことの方が多いです。そのトロンボーンが年がら年中聞こえてくるのは、必ずしも良いオーケストラとは言えないかもしれません。

 

髙橋

しかし、お芝居の成功には名脇役の力が大切ですよね?

 

池上

セクションの御近所同士での仕事がうまくいったりした後は、気分良くお酒の席に突入できますね。それもまたトロンボーン・セクションだけで飲みに行ったりするんですけどね。

 

髙橋

右手のスライドは難しそう。油断すると、出したい音から行き過ぎてしまったり、的確な音程を得られるまでにはかなりかかるのでは?

 

池上

右手のスライドの動きも大変ですが、苦労が多いのはむしろ地味な左手の方で、右手が自在に動くためには、左手がしっかりと重い楽器を支えていないといけません。そのため、左手の筋肉だけが発達してしまい、マッサージ等に行くと「どういうご職業ですか?」と遠慮がちによく聞かれます。

 

髙橋

特別に鍛えるのですか?

 

池上

楽器の練習に伴って鍛えられるように心がけています。

 

髙橋

音楽のきっかけは合唱ですか?

 

池上

うちは代々、小学校に入ると同時に町の少年合唱団に入るのがしきたりみたいになっていて、合唱ですから当然、ハーモニーをつくり、良い声を出そうとし、すでに今の仕事に就いていました。

 

髙橋

みんなで歌うことは今でも好きですか?

 

池上

好きですね。《第9》のリハーサルの時などは人知れず背後の合唱に合わせて歌ってたりしています(笑)。もちろん1人で歌うのも好きです。学生相手にカラオケですけど…。

 

髙橋

藝大在学中からプロのオーケストラに入団してたんですね?

 

池上

はい。藝大1年の春から、東京シティフィルに6年程在籍しました。その後、東京交響楽団に移籍して5年半在籍しました。中学生の頃から「N響アワー」が好きで、とにかくオーケストラに入団したいと思ってました。

 

髙橋

どういうところを見てたのですか?

 

池上

大御所トロンボーン奏者の方々の仕事ぶりです。他の方々が演奏している時に、楽器をスタンドに置いて悠々としていて、演奏が盛り上がってきたところで、後方から誰よりも大らかな音を轟かせるところが純粋に格好良かったですね。あとテレビなので、一挙一動をチェックするのが楽しみでした。ほとんどオタクの世界ですね。

 

髙橋

オケのオタク……

 

池上

曲の途中の休みの時のたたずまいとか、どこら辺から構え始めるのかとか、このクライマックスの場面ではどういう構え方をするのかとか、他の方のソロの時はどういう表情で見守っているのかとか、一瞬のことで見逃せませんから、ブラウン管にかぶりつき状態でした。ですからいま逆に、「N響アワー」で僕の構えなどが見られているのではないかと緊張してしまったりして。全然、音楽の話ではないですね(笑)。

 

髙橋

ではオケオタクからご覧になったN響とは?

 

池上

1人1人の責任が重いオケですね。緊張感がちがいます。

 

髙橋

入団なさって5年。やはりまだ緊張なさいますか?

 

池上

もちろん、前の晩は眠れません。

 

髙橋

ライブハウスでジャズもなさるとか。

 

池上

トロンボーンのジャズとクラシックの畑のちがう奏者が集まって演奏したりしています。お互いの演奏に興味津々ですし、お客さまの反応もダイレクトなので、つまらなそうだとすごく不安になります。

 

髙橋

きっと「N響アワー」で多くの方が池上さんを見て勉強なさっていることと思います。

 

池上

また緊張してきちゃいました…

 

髙橋

今日はありがとうございました。

 

写真撮影 ― 堀田正矩
「フィルハーモニー」2007年2月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

髙橋美鈴

聞き手

髙橋美鈴

たかはし・みすず

NHKアナウンサー。北海道出身。東京大学卒業。1994年NHK入局。6年間の札幌局勤務後東京アナウンス室。「おはよう日本」で朝の顔として人気を博し、現在「N響アワー」「美の壷」等で活躍中。趣味は美術や演劇鑑賞、茶道。