NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

大林修子

大林修子

ヴァイオリン

おおばやし・のぶこ

長野県出身。東京藝術大学卒業。第50回日本音楽コンクール第3位入賞、第26回文化庁海外派遣コンクールで松下賞受賞、1982年パガニーニ国際音楽コンクールで特別賞受賞。1989年9月1日N響入団。

 

髙橋

大林さんは第2ヴァイオリンの次席を務めていらっしゃいますが、第2ヴァイオリンの役割はどのようなものなのでしょうか?

 

大林

よくされる質問で(笑)、さらに、目立ったメロディーもないしなにが楽しいのでしょうか?ともよく聞かれるのですが、いつもこんなふうにお答えしているんです。
誰が来ても部屋をきれいにしておく……というか、誰かが来たり、出て行ったり、また、別の誰かが入って来たり……というなかで、そこに居る人や、入って来る次の人のために、そこが居ごこちのいいように、みんなが気持ちのいいようにすることだと思います。
第1ヴァイオリンにいる時には分らなかった面白さがあります。たとえば、その和声構成音にはないメロディーを第1ヴァイオリンが奏でているとき、第2ヴァイオリンはどのようにその和音を響かせるか、また、和音の変わり目での第2ヴァイオリンの響きが一瞬にして全体の雰囲気を変化させたり、長三和音の第3音をほんの少〜し低くして微妙なニュアンスを作り出したり、束の間主旋律に顔を出したかと思うとふいっと隠れたり、100人余りの人間が1つのものを作っているわけで、うまく行ったときの喜びはひとしおです。

 

髙橋

どのような作品が好きですか?

 

大林

モーツァルトの交響曲など好きです。第2ヴァイオリンがテンポを作る場面が多いと感じていますし、またモーツァルトは、第1ヴァイオリンの語りかけに第2ヴァイオリンが合いの手をうったり。サー・ロジャー・ノリントンのもとでの《第39番》はとても楽しいものがありました。

 

髙橋

マエストロ・ノリントンに深い印象を持たれたのは、聴衆だけではなく楽員の方もなのですね。

 

大林

ノン・ヴィブラートでと言われましたので、最初はとまどいました。練習も厳しかったし、右手で音を作らなければならなかったので右手が疲れましたが、緊張しながらも本番はとても楽しく弾けました。

 

髙橋

私も聴いていてとても楽しかったです。音自体も軽やかでしたし。
入団19年目ですが、振り返ってみてどのようなことが思い出されますか?

 

大林

30歳少し前に入団したのですが、早いものですねぇ。シンフォニー・オーケストラではオペラを演奏する機会はあまりありませんが、ワーグナーのオペラ(2003年3月末〜4月初頭・新国立劇場、準・メルクル指揮《ジークフリート》)は、準備期間も長かったし——丸々1週間練習日でした——公演時間も長時間にわたり、体力的にとてもキツイものがありましたが、歌手の声量も豊か、舞台装置も豪華で、これぞ“総合芸術”という感じで、この場所にいられて本当に良かったと感激していました。公演が終わったのちも、しばらくワーグナーが頭のなかで鳴り響いていました。

 

髙橋

同じ曲も何回か演奏してきてらっしゃいますよね?

 

大林

これは音楽家の良いところでも悪いところでもあると思いますが、器械ではないので、昨日と今日とでは感じ方がちがっていたり、同じ楽譜でも、10年前と今とではちがう読み取り方をしたりして、新しい発見に実は満ちているのです。昔の書き込みを見て、こんなこと考えていたのだと懐かしく思うこともあります。

 

髙橋

ヴァイオリンはいつからはじめられたのですか?

 

大林

3歳からです。父がヴィオラで合奏団に入っていて、ソリストに徳永二男先生をお招きしたのが縁で、藝大に入るまで指導していただきました。

 

髙橋

松本から通われたのですか?

 

大林

はい。レッスンの日は電車に乗る前からお腹をこわすほど緊張していました。今でもお会いすると緊張します(笑)。

 

髙橋

お父様が弦楽合奏をなさるということは、ご家庭のなかも音楽的な環境だったのですか?

 

大林

家族で弦楽四重奏で遊んでました。妹がヴァイオリン、弟がチェロで、中学生になるとサッカーに夢中になってしまいましたが。今のように頻繁にコンサートが地方都市でも開かれる時代ではありませんでしたので、市民会館によく、外国や都会のオーケストラなどが来ると、一家総出で聴きに行きました。

 

髙橋

お休みの日に散歩したりするのが好きだというところに共感を抱きました(笑)。

 

大林

図書館に行くのも好きですし、浅草や深川、知らない商店街を歩くのも好きです。昔の地図が好きで、現在の地図と重なるソフトもあって興味深いです。

 

髙橋

知らない町まで足を伸ばす……本当に楽しいですね。

 

写真撮影 ― 堀田正矩
「フィルハーモニー」2008年10月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

髙橋美鈴

聞き手

髙橋美鈴

たかはし・みすず

NHKアナウンサー。北海道出身。東京大学卒業。1994年NHK入局。「美の壺」「日本の伝統芸能」等や、「探検ロマン世界遺産」リポーターとしても活躍。