NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

山岸 努

山岸 努

ヴァイオリン

やまぎし・つとむ

千葉県出身。桐朋女子高等学校(共学)を経て桐朋学園大学卒業。第51回、第54回全日本学生音楽コンクールでそれぞれ第2位入賞。第12回日本モーツァルト音楽コンクールで第1位を受賞し、大賞選考会においても大賞を受賞する。これまでに辰巳明子、堀正文、佐藤明美の各氏に師事。2009年5月1日入団。第1ヴァイオリン奏者。現在、N響メンバーを中心とした室内楽や、ソロで精力的に演奏活動をしている。

 

個人の上手さがオーケストラのいい演奏につながります

華恵

楽器と出会ったきっかけを教えてください。

 

山岸

3歳くらいの時に母が音楽をやらせようと、いろいろな音楽教室に連れて行ったようですが、面接でどこからも断られて。とてもはしゃぐタイプの子どもだったんです。5歳ころになって、桐朋学園子供のための音楽教室に行ったら、「走り回っていても大丈夫ですよ」と受け入れてくれました。それが音楽を始めるきっかけになりましたね。母親はピアノをやらせたかったみたいなんですが、じっと座っていられなかったので却下となり、たまたまテレビでヴァイオリンの演奏を見て、「あの棒がほしい」とねだったみたいです。

 

華恵

音楽家のご家庭だったのですか?

 

山岸

母は少しピアノを教えていたことがあるのですが、父親がまったくクラシックとは縁のない人間だったので、家の中にクラシックが溢れていたわけではないです。小学校の頃は、母親が厳しく練習を管理して、学校から家に帰るとまず30分は練習させられました。楽譜が全部並べてあって待ち構えられていました。友達と一緒に帰ってきても、友達を待たせて、まずヴァイオリン。

 

華恵

それはよくお友達も待ってくれましたね。いつ頃から自分で真剣に取り組みだしたのですか?

 

山岸

小学校5年生の時に音楽教室の先生からコンクールを勧められて、そこから変わってきましたね。同年代の上手な人達と出会って仲良くなり、ライバル意識もあって練習量も自然と増えていきました。

 

華恵

コンクールは好きでしたか?

 

山岸

好きか嫌いかと言えば嫌いではなかったですね。

 

華恵

コンクールのどういう部分に惹かれたんでしょうか。

 

山岸

結果がはっきりと出るのが好きでした。たまたま結果につながることもありましたから。コンクールでたびたび顔を合わす上手い先輩達や同級生に囲まれて、負けたくないという気持ちもありました。

 

華恵

演奏家として生きていきたい、ということをはっきり意識した時はいつ頃でしょうか。

 

山岸

そこら辺は曖昧ですね。ずっと流れに沿ってきてしまったので。高校3年生の時に腱鞘炎になって手を壊して、1年間ほどヴァイオリンを弾かなかった時期がありました。その時に初めて、将来の行方を考えました。このままもうヴァイオリンが弾けるようにならなかったら……と悩みましたが、何とか復帰できました。

 

 

 

華恵

手を故障する事故があっても音楽から離れることはしなかったんですね。

 

山岸

目指していたコンクールの1週間前のアクシデントでしたから、かなり精神的に荒れましたね。1年後にもう一度始めた時はヴァイオリンを弾くのすら辛い状況でした。まったく弾けなくなっていて。でも一方で、ほっと安心もしました。ようやくレッスンに行き始めて、コンクールへの挑戦も再開しました。

 

華恵

ソリスト志向だったのですね。N響に入団しようと思われた心境は?

 

山岸

子どもの頃はソリストを目指していたのですが、大学に入り、オーケストラの道も考えるようになり、ぜひN響に入りたいと思うようになりました。

 

華恵

N響に入ってからは音楽観は変わりましたか。

 

山岸

きちんと勉強していろいろなことを覚えていくにつれ、面白味がわかってきました。

 

華恵

入って楽しいことはなんでしょう。

 

山岸

素晴らしい指揮者がいらして、練習の時からピリッとした空気のなかで演奏できるのが、とても楽しいです。入団して間もない頃から、先輩方と室内楽をする機会にも恵まれ、常に刺激を受けています。

 

華恵

ヴァイオリンと出会って良かったですか。

 

山岸

難しいですねぇ。ヴァイオリンのない人生というものに、羨ましさも感じます。 大学生活、サークル 、就活など、そういうのも楽しそうに見えます。

 

華恵

今後求める音楽家像はどんな姿ですか。

 

山岸

素晴らしい先輩方を間近で見ていると、毎日頑張って練習し続けるという日々が待っているのかなと思います。とにかく上手くなりたいというのが常にあります。

 

華恵

それは、どういう上手さなのでしょうか。

 

山岸

お客さまが満足していただける演奏をできるようにと心掛けていますが、100人に聞いて、今は何人か分からないですけど、いずれは100人全員が満足したと答えてもらえるようにしていきたいですね。個々の能力を磨くことが大切だと信じてます。

 

写真撮影 ― 藤本史昭

2013年5月取材 ※記事の内容およびプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

華恵

聞き手

華恵

はなえ

1991年アメリカ生まれ。6歳から日本に住む。2003年、12歳で『小学生日記』を刊行し、エッセイストとしてデビュー。NHK BSプレミアム「世界遺産~一万年の叙事詩~」でのナビゲーター、連載エッセイなど、幅広く活躍中。現在、東京藝術大学音楽学部楽理科に在学中。