NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

石川達也

石川達也

ティンパニ&打楽器

いしかわ・たつや

新潟県出身。武蔵野音楽大学卒業。在学中に東京フィルハーモニー交響楽団入団、1993〜2001年在籍。1996〜1997年ベルリンへ留学。これまで打楽器を小林美隆、フランツ・シンドルベック各氏に師事。2002年9月1日N響入団。

 

髙橋

打楽器は民族的なものも含めるととても多様で、なかには「え?」というようなものもあるのでは?

 

石川

「Music Tomorrow」(「尾高賞」受賞作および同時代作品によるN響公演)で1度、「縄跳びを回せ」という指示がありました。その時は上手(かみて)と下手(しもて)で燕尾服を着た打楽器奏者が頭上で縄跳びを回していました(笑)。また、皆さんよくご存知の曲でも、たとえばマーラーの《交響曲第6番》第4楽章いわゆる「ハンマー」という指示のある部分ですが、直接ハンマーで床を叩くと舞台の係の人におこられるので、使わなくなったソロ・チェリスト用の台を叩いたりと、いろいろ工夫しています。

 

髙橋

いろんな楽器を担当しなくてはなりませんが、やっぱり好き嫌いはありますか?

 

石川

嫌いなものは言えませんが(笑)、好きなものは小太鼓とシンバルです。なるべく担当になるといいなーと思っています。

 

髙橋

でもシンバルって、失敗するとものすごく目立ちますよね……

 

石川

ですから絶対失敗は許されないと思っていますが、世の中“絶対”という保証はない、などと考えはじめるともう考えすぎてまずいので「なるべく考えないようにしよう。なるべく考えないようにしよう。なるべく考えないようにしよう……」と100回ぐらい言って乗りきっていますが。

 

髙橋

どのような音を目指すのですか?

 

石川

打楽器は基本的に音量の大きいものが多いので、まず全体とのバランスを考えます。
音色は、全体の練習を始めてみないと確定できない部分もあるのです。シンバルには厚い音・薄い音、高い倍音・低い倍音などのバランスがあり、楽器を使いわけて、力強い表現には金属音が際立つ激しい音のものを持ってくるなど、予想できるところもありますが、実際に練習に入ってみると、同じpでも、たとえば指揮者がもっと幻想的な雰囲気を求めている場合、よりはかない音のする楽器に変えてみたり。

 

髙橋

石川さんが理想とする音は?

 

石川

自然な音です!自分の独特の音も研究していますが。

 

髙橋

留学中はベルリン・フィルの奏者に師事されましたが、いちばん勉強になったことは?

 

石川

とにかく楽な状態でいないと演奏できないので、いつも「locker」(独語で「力を抜いた、リラックスした」等の意)にと言われていました。太鼓は特に、余計な力が入っているといないでは全く音が違います。

 

髙橋

「尊敬する人」に司馬遼太郎さんを挙げていらっしゃいますね。

 

石川

司馬遼太郎さんは『この国のかたち』で日本人の考え方や社会の在り様のルーツを、ここまで掘り下げるのかと思うほど追究した点でも大変功績のある方だと思います。僕も留学中、ドイツ人は歴史的にも自分たちの音楽を演奏し、小さな町にもオケがあって音楽家として生活が成り立つ基盤がある一方、日本はそれほどクラシック音楽ファンの層が厚いとは思えないけどなぜ僕はこの道に進み留学しているのだろう、打楽器奏者ってオケの中でどういう位置なのだろうなどなど、考えに考えました。ところが少なくとも僕の周りのドイツ人は全くそんなこと考えてないように見えるのです。もちろん彼らには彼らの考える方法があって、しかしその上で、力が抜けているのでしょうね。特に東京は人が多くて、田舎で育った僕は今だに緊張してしまうのですが、司馬遼太郎さんのように考え抜きながら、力が抜ければと思うのですが。

 

写真撮影 ― 堀田正矩
「フィルハーモニー」2007年10月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

髙橋美鈴

聞き手

髙橋美鈴

たかはし・みすず

NHKアナウンサー。北海道出身。東京大学卒業。1994年NHK入局。6年間の札幌局勤務後東京アナウンス室。「おはよう日本」で朝の顔として人気を博し、現在「N響アワー」「美の壷」等で活躍中。趣味は美術や演劇鑑賞、茶道。