NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

青山聖樹

青山聖樹

オーボエ首席

あおやま・さとき

東京生まれだが、2歳からドイツのハノーファーで育つ。東京藝術大学附属音楽高校から同大に進み、小島葉子、北島章各氏に師事。在学中にハノーファー音楽大学とシュトゥットガルト音楽大学に留学し、インゴ・ゴリツキ氏に師事。1993〜99年ドイツのフィルハーモニア・フンガリカ首席、2002〜05年新日本フィルハーモニー交響楽団首席を経て、2007年4月1日からN響首席オーボエ奏者。また、アンサンブルofトウキョウおよび、さいたまアンサンブルのソロ・オーボエ奏者、武蔵野音楽大学で後進の指導にもあたっている。

 

岩槻

首席を務められるプレッシャーのようなものはありますか?

 

青山

あります。いつも緊張しています。しかし嫌な感じのプレッシャーにはなっていません。大抵の場合、気分が高揚してきて良い意味での緊張感に変わっています。

 

岩槻

ベスト・コンディションを保つために、また、本番で100%の力を発揮するために、青山さんはどのような方法を採っていらっしゃるんですか?

 

青山

曲の準備やゲネプロで気づいた点のチェックももちろんなのですが、もう1つ大事にしていることは「休む」時間の確保です。本番当日のゲネプロは多くの場合お昼過ぎには終わり、夜の演奏会まで時間があります。その間、可能な限り神経をoffの状態にするために、できれば寝てしまいます。チェックし、休み、本番のステージに向かう前に再度チェックしますが、クリアな思考で再チェックし且つコンディションを万全なものに持っていくためには、一旦頭と神経を休める時間がとても大切になっています。

 

岩槻

寝る、というとどんな所で?

 

青山

僕は車の中です。お布団も枕もあります。最近はマットレスも備えてあります。

 

岩槻

ヴァージョン・アップしてますね(笑)。
オーボエの方には最適なリードを作らなければならない苦労もありますが、常時何本ぐらい持っていらっしゃるのですか?

 

青山

演奏には1本だけあればいいわけで、1本持っていようが30本持っていようが関係ないのかもしれませんが、心配症なせいか僕は大量に持ち歩いています。

 

岩槻

リードは、どの時点から製作するんですか?

 

青山

年に1度、南フランスの農家の畑に葦を買いに行っています。

 

岩槻

フランスまで?! 直接畑に行って「この葦を」と?!

 

青山

はい。栽培され、乾燥させてある所があり、そこで原木を選び、買って帰ります。

 

岩槻

それって、フツーのことなんですか?

 

青山

んー、いろいろな方法があると思いますが。

 

岩槻

青山さんは、その原木からリードを作っていくんですね。

 

青山

ええ。ある程度の形まで削ってある製品もありますが、原木の筒を割るところから自分で始めれば、全てコントロールしてピッタリのものを仕上げる確率が高くなります。

 

岩槻

原木を見る目も確かになるのでしょうね。

 

青山

そうありたいのですが、たまに、はずれたりしますからねぇ。

 

岩槻

購入の単位は?

 

青山

1kgでリード約1000本分です。前回は4〜5kgかついで帰ってきました。

 

岩槻

送らないんですね。

 

青山

ほとんど手ぶらで行きますから。

 

岩槻

それが1年分ですか?

 

青山

少し寝かせますので、何年か前に買ったものを使うという循環になっています。

 

岩槻

じゃあ、ご自宅には原木のストックがたくさんあるのですね?

 

青山

相当あります。

 

岩槻

ところで、長期のお休みは取れるものなんですか?

 

青山

かためて——できるだけ5日以上——楽器ケースも開けないようなお休みを、何回か取るようにしています。2008年は夏に3週間以上、吹かないようにしました。

 

岩槻

それって……すごく勇気が要ることのように思いますが。

 

青山

肝心なことは、お休みに入る前に、再開する時のコンディションを予めきちっと設定しておくことなのです。「どうしよう!」という地点から始まらないように、楽器とリードのコンビネーションも“これなら必ずうまく行く!”という状況を設定し、それを信じます(笑)。ただ、筋肉が元に戻り本調子だと感じるまでには半月はかかりますが。

 

岩槻

お休み中はどういうことをなさるのですか?

 

青山

2008年の夏は庭で畑仕事をしました。

 

岩槻

収穫は?

 

青山

トマト、きゅうり、パプリカ……

 

岩槻

ご家族も喜ばれたことでしょうね(笑)。みなさん、やはり楽器を演奏されるのですか?

 

青山

15歳の姉の方はピアノを、12歳の弟の方はホルンを。

 

岩槻

青山さんの演奏会には?

 

青山

まず来ません(笑)。

 

岩槻

あまりに日常的になってしまっているのでしょうね。
青山さんの最初のオーボエの先生はゴリツキ氏で——巨匠が音の出し方から教えたのは青山さんともう1人ぐらいだとお聞きしていますが——、今や先生と共演(2008年11月10日・武蔵野音大ベートーヴェンホールにて)するまでになられたわけですから先生も感慨深いでしょうね。

 

青山

子どもの頃から、全てを教えてくれる師であり、また、音楽家としてもアイドルでした。そして今も先生は僕のアイドルです。それは単に「先生だから」ではなく、年齢を重ねられ、衰えるどころか逆に、新鮮な発見のできる音楽に満ちているからです。自分が歳をとったことで、先生の偉大さも、より明確に分かってきました。

 

岩槻

ゴリツキ氏との共演、今後もますます楽しみですが。

 

青山

今回共演した作品のなかに、韓国の作曲家・故・尹伊桑氏が先生のために書いた《2本のオーボエのための「インヴェンション」》(1983)という、4楽章から成るとても難しくて相当コンディションを整えないと吹きこなせない作品があったのですが、演奏が終わって舞台の袖にいっしょに戻って来た時、なんて言われたと思います? 「疲れた」とかではなく、「今度は二重奏作品を全部やろう!」とおっしゃったのです(笑)。「次回はちょっと……」と思われたのではなく、先生も喜んでくださったことがとても嬉しかったです。

 

岩槻

ゴリツキ先生の元で、迷わずプロの音楽家の道を進まれたのですか?

 

青山

藝大には2か月いて、大学生活のほとんどをドイツで送ったのですが、ドイツの音楽大学は“大学”という名はついていますが、日本のようなカリキュラムがあるわけではなく、いわば先生に師事して学ぶ養成所のような感じでしょうか。先生も責任をもってプロにするまで面倒を見ます。従ってプロに“しない”責任もそこには含まれていて、音楽家に向かない弟子には他の職への転向も勧めますし、入学して2年後ぐらいに行われる中間試験——ハーフ・リサイタルほどのもの——で落とします。

 

岩槻

プロは無理と言われたら諦めないといけないのですか……

 

青山

言われてしまった同級生がいて「僕は先生のレッスンが好きだ。中間試験で落とす権利はあるけど、それまで居る権利はあるのだから中間試験までは待ってほしい」と頼み、その同級生は1年後にオーケストラに入って行きました。

 

岩槻

あらー、その後は……

 

青山

大きなオケの首席になっています(笑)。

 

岩槻

かえってそれがもの凄い努力を引き出したのでしょうね。
青山さんは、オーボエの魅力をどう感じていらっしゃいますか?

 

青山

僕は、他の楽器と混ざり合ったりいっしょに演奏した時に大きな魅力を発揮する楽器だと思っています。モーツァルトには本当にそういう場面が多いのですが、ちょっとしたソロの旋律を他の楽器と共に吹いた時の溶け合った音や、弦楽器と混ざり合う瞬間……僕にとって音楽のいちばんの楽しみは室内楽で、管楽器のなかでオーボエにはその魅力が最もあると思っています。

 

岩槻

本当に楽しいお話、ありがとうございました。

 

 

 

 

写真撮影 ― 堀田正矩
「フィルハーモニー」2009年1月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

岩槻里子

聞き手

岩槻里子

いわつき・さとこ

NHKアナウンサー。愛知県出身。津田塾大学卒業、上智大学大学院博士前期課程修了。1998年NHK入局。2007年6月~2008年3月までメインキャスターを務めた「お元気ですか日本列島」では気さくな人柄が人気を呼んだ。2008年7月から「COOL JAPAN―発掘!かっこいいニッポン」のナレーションを担当。2008年4月から2011年3月まで「N響アワー」に出演。趣味はヴァイオリン。