NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

三戸 正秀

三戸 正秀

チェロ

さんのへ・まさひで

青森県出身。国立音楽大学附属音楽高等学校を経て、国立音楽大学卒業。師に、故阿保健、故大村卯七、小野崎純の各氏。1984年2月1日N響入団。N響メンバー等による弦楽5部+ピアノによる「アンサンブル・クラルテ」のメンバーとして、「NHKこども音楽クラブ」をはじめ各地での親しみやすいコンサートにも活躍。

 

岩槻

初めてN響で弾かれたのは?

 

三戸

大学3年のときで、1979年A定期の11月14、16日第794回定期。ギュンター・ヴァントさん指揮でのブルックナー《交響曲第5番》でした。忘れられません。ヴァントさんのブルックナーは特に素晴らしいと以前から聞いておりましたので、楽しみで、また、すごく緊張もしていました。

 

岩槻

どんな記憶が残っていますか?

 

三戸

もちろんヴァントさんの指揮にも感動しましたが、しかしそれ以上に、N響の基礎の高さ、表現の幅の広さに驚いていました。学生オケの経験しかない私にとって、未知の世界とも言えるほど驚異でした。

 

岩槻

入団はそれから5年後ですね。

 

三戸

1982年12月にオーディションを受け、1983年2月から1年間契約期間。3月の定期はAプロ・Cプロ(第896・897回)ともに同じ曲目で、ワーグナーの前奏曲等を集めたプログラムでした。指揮はシュタインさん。感銘の定期でした。これがまたチェロのパートが難しくて、譜読みに追われ、寝るのが夜中の2時3時という生活が続きました。

 

岩槻

以来26年になられたわけですが……

 

三戸

N響で弾けるのもあと8年……。お客さんの前で弾けて幸せでした。

 

岩槻

強烈な思い出などはありますか?

 

三戸

マタチッチさんです。1984年3月定期のプログラム3つともで、Aプロがブルックナー《交響曲第8番》、Bプロがマタチッチ作曲《対決の交響曲》とベートーヴェン《交響曲第2番》、Cプロがブラームス《交響曲第1番》とベートーヴェン《交響曲第7番》でした。演奏しながら、こんなにオーケストラとは楽しいものかと、とても嬉しかったですね。

 

岩槻

それほどマタチッチ氏の棒は素晴らしかったんですね。

 

三戸

足を悪くしていらして、指揮台につくまで、団員の肩をかりて練習場に入って来られました。そんな不自由な身なのに、指揮台につかれたとたん、ブルックナー第1楽章冒頭のテンポが分かるんですよ!

 

岩槻

どういうことなのでしょう?

 

三戸

オケもピタッと出られました。神様に思えました。

 

岩槻

はぁー!そこに立つだけでテンポが分かる?!

 

三戸

ブルックナーの第4楽章、手をきらきらさせて。私も、音量や弓の圧力が操られるように導かれて、何が何だか分かりませんが、弓が折れても構わないと思うぐらいで、そのような定期に3つとも乗ることができました。オケ全体があんなにすごい音になるなんて。

 

岩槻

素晴らしい経験をされたんですね……。今日ゲネプロで聴かせていただいたビシュコフさん指揮のマーラー《交響曲第5番》も、ジーンときました。この《第5番》は三戸さんは今まで何回ぐらいN響で演奏されてますか?

 

三戸

5〜6回でしょうか。今回のビシュコフさんと、ブロムシュテットさん、ある意味山田一雄さん(笑)の指揮が印象深いですね。チェロ・セクションが「1人で弾いているようだ」「良いチェロ・グループだ」とセクション全体を評価してくださった時が一番嬉しいです。チェロって、ツアーに行ってもいっしょに食事したり──仲の良い楽器らしくてどこのオケもそうみたいですが──しています。それから我がチェロセクションの、特に若いメンバーは(笑)良くオケの曲をさらって来ます。室内楽の勉強にも精力的に取り組んでいます。セクションのなかでもちろん切磋琢磨はしますが、お互いを認め合う伝統がずーっと続いてそれが音に出ているように思います。

 

岩槻

息をのむような静けさのなかで、チェロが第1主題を響かせるソリの部分は、本当にゾクゾクしました。三戸さんも燃えてらっしゃいましたね!
ところで、ツアーでは皆さんでお食事しながら、どんなお話をするんですか?

 

三戸

僕はひたすら黙ってお酒の注文していますが……。

 

岩槻

いやいやいやいや(笑)。

 

三戸

話のついでに「今日のあれは何なの?!」ぐらいはしているでしょうか(笑)。

 

岩槻

飛び出したり?

 

三戸

いいえ、飛び出すのは、積極的な証左でもあるので、それは責めたりしません。それよりも、迂闊だったり適当な弾き方を感じた日には!

 

岩槻

やっぱり、スゴく熱いハートの軍団ですよね。4月はブロムシュテットさんでのマーラーやブルックナーもありますし、Cプロのブルックナーも楽しみにしています!ありがとうございました。

 

写真撮影 ― 堀田正矩
「フィルハーモニー」2010年5月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

岩槻里子

聞き手

岩槻里子

いわつき・さとこ

NHKアナウンサー。愛知県出身。津田塾大学卒業、上智大学大学院博士前期課程修了。1998年NHK入局。2007年6月~2008年3月までメインキャスターを務めた「お元気ですか日本列島」では気さくな人柄が人気を呼んだ。2008年7月から「COOL JAPAN―発掘!かっこいいニッポン」のナレーションを担当。2008年4月から2011年3月まで「N響アワー」に出演。趣味はヴァイオリン。