NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

坂口弦太郎

坂口弦太郎

ヴィオラ

さかぐち・げんたろう

大阪府出身。東京藝術大学・同大大学院室内楽専攻修了。これまでヴァイオリンを、大槻洋子、大熊庸生、天満敦子の各氏に、17歳でヴィオラに転向し、中塚良昭氏に師事。また、室内楽を岡山潔、澤和樹、苅田雅治、坪田昭三、渡辺健二の各氏に、ヴィオラとピアノの二重奏を松原勝也氏に師事。2000年10月1日N響入団。2006年に結成した「アペルト弦楽四重奏団」、室内オーケストラ「ARCUS(アルクス)」のメンバーとしても活動している。

 

岩槻

前からすごく気になっていたのですが、まさに弦楽器を弾くために生まれてきたようなお名前ですね。

 

坂口

そうですよね。でも画数で付けたそうです。

 

岩槻

あっ、そうなんですか(笑)。音楽家にしようというご両親のご期待だったのではなく?

 

坂口

いやー、母は声楽家で伯父も声楽家ですが、どうなんでしょう……ヴァイオリンを弾きたいと言い出したのも自分からでしたし。

 

岩槻

ほとんど大学受験に近い年までヴァイオリンを弾いていらしたのですね?

 

坂口

高校2年まで師事していた天満敦子先生が、ヴァイオリンの最後の先生です。天満先生が「あなたはヴィオラがいいわ」と勧めてくださいました。

 

岩槻

初めてヴィオラを持ったとき「これだ!」と?

 

坂口

楽器云々よりもとにかく、音楽に携われればという思いでした。

 

岩槻

それでは、ヴィオラを人生の相棒にしようと決めた決定的瞬間はいつ?

 

坂口

まだ知り合いでもなんでもない頃、店村眞積さんの「ブラームス:ヴィオラ・ソナタ」のCDを聴き、良いヴィオリストへの模索が目標になりました。
それまで自分は普通高校だったこともあり、「音楽」を学ぶといっても自分1人の世界でやっているだけで、ヴァイオリンの音ならパールマンを聴いても、自分もそんな音を出しているような気になっていました(笑)。ところが、大学1年の学期末試験で浦川宜也先生に「君は音に全く魅力がない。ヴィオラは音に魅力がないと、何やっても意味ないよ」と言われ、愕然としました。その頃のことです、店村さんの音を聴いたのは。自分と全く異なる音に強烈な衝撃を受けました。ヴィオラの音色はとりわけ、各奏者の個性が色濃く反映され、誰かと比較してどうのという次元にはないものでしょう。たとえば、NHKホールのそでで誰かが音出しをしているのを聴いただけでも、誰の音か聴き分けられるほど、音色の個人差は非常に大きいです。SMAPの《世界に一つだけの花》の歌詞ではないけど、誰にもマネのできない「オンリー・ワン」なんですよ!
それほど、音色というものへのこだわりが人一倍、ヴィオリストにはあるのかもしれません。たとえば、楽器屋さんに行くと僕なんかでも4時間ぐらいは相談していますよ。「こんな音がほしいんですが」「そういう音が出したいならこの弦はどうか?」、弦の張り替えのときに魂柱の位置はどうしてみようか等々、たくさんのやりとりであっという間に数時間経ちます。

 

岩槻

坂口さんは、弦楽四重奏やピアノ・クィンテットの他にも、さまざまなアンサンブルで演奏されていらっしゃいますが、室内楽の魅力をどう感じていらっしゃいますか?

 

坂口

自分たちが主体的に音楽を創り上げていけるところです。全部が全部そうとは限りませんが、少なくとも、自主的に組んでいるグループでは、喧嘩になってもいいから意見を出し合いたいと思っています。自分たちで考える必要があるのに、人の指示にただ従っているだけでは、せっかく自分たちの手による室内楽を紡ぎ出そうという意味や面白さがないと思うのです。
オーケストラに所属していればご飯は食べていけますが、それだけではこれまで両親はじめ家族の協力のもと、数々の先生方にご指導いただいてきたことに応えるという意味では、物足りなく思いますし、何より室内楽には素晴らしい名曲や学ぶべき事がたくさんありますので、自分でももっと何かをやってみようと。また、スケジュールが立て込んでくるほど、自分を見つめる時間が必要だと感じていますので、たまに開くリサイタル等も大切に考えています。

 

岩槻

オーケストラをやっているからこそ、自分なりの活動が必要だと?

 

坂口

相乗効果だと思います。室内楽で切磋琢磨する過程において意見を交わしたことがオーケストラで生かされていると感じることも少なくありませんし、また、オケで学んだことは、もちろん室内楽にも生かせています。オーケストラですと、たとえメンバーそれぞれが卓越した音色を持っていても、響き自体はその総体として表出されます。その総体のレヴェルを左右するのは個々の音の質なので、魅力的な個々の音の総体でなければならないのは言うまでもありませんが。室内楽では逆に、ヴィオリスト個々の独自の音を味わっていただけたらと思います。

 

岩槻

将来の夢は?

 

坂口

一生音楽に携わっていければと。N響を退団してもオーケストラ活動を続けられたり、「坂口さん弾いてください」とアンサンブルに声がかかったら本当に嬉しいですね。

 

岩槻

それではこれからも、オンリー・ワンを目指して……

 

坂口

そう、自分の音を磨いていきたいです。

 

岩槻

楽員の方々の個性がより克明に響く室内楽にも注目ですね。ありがとうございました。

 

写真撮影 ― 堀田正矩
「フィルハーモニー」2010年2月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

岩槻里子

聞き手

岩槻里子

いわつき・さとこ

NHKアナウンサー。愛知県出身。津田塾大学卒業、上智大学大学院博士前期課程修了。1998年NHK入局。2007年6月~2008年3月までメインキャスターを務めた「お元気ですか日本列島」では気さくな人柄が人気を呼んだ。2008年7月から「COOL JAPAN―発掘!かっこいいニッポン」のナレーションを担当。2008年4月から2011年3月まで「N響アワー」に出演。趣味はヴァイオリン。