NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

佐藤 由起

佐藤 由起

ファゴット

さとう・ゆき

桐朋学園大学卒業。シドニー大学大学院修了。師に、浅野高瑛、武井俊樹、吉田将、マシュー・ウィルキー各氏。大学院在学中、シドニー交響楽団契約団員として活動。スイス・ツェルマット・フェスティヴァル(2007)に招待参加。小澤征爾音楽塾、PMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)2006・2007、宮崎国際音楽祭等出演。ヨーロッパ室内管弦楽団のパリ、ケルン公演ツアーに客演。第21回日本管打楽器コンクール第2位(2004)。洗足学園音楽大学非常勤講師。2009年5月1日N響入団。

 

岩槻

昨年5月に正団員になられたフレッシュな佐藤さん。1年間の契約期間を経られたわけですが、契約期間中は、全定期で演奏しなければならないそうですね?

 

佐藤

弦楽器は原則的にそのようですが、管は、2番奏者が3人いて、順に回していきますので、プログラムによっては乗らない場合も出てきます。

 

岩槻

期間中、厳しくアドヴァイスされることもありましたか?

 

佐藤

内心どうしていいか分からずにいることに、ズバリご示唆をしてくださったり、言っていただいたアドヴァイスは私のなかで道しるべとなっています。

 

岩槻

たとえばどのようなことを?

 

佐藤

こんな大きな音を出してはいけないのではとか、2番奏者として支えなければとか、少し思い詰める部分もあったのですが、「そこはもっと吹いていいよ」と言っていただいたり、前向きになれるアドヴァイスをたくさんしていただいています。

 

岩槻

同じファゴット・セクションの方にですか?

 

佐藤

同じような音域のチェロの方にもです。

 

岩槻

もっと聞こえてもいいと……

 

佐藤

はい。それに同じ音域ではないセクションの方が、「あそこ、よく聞こえてたよ」と言ってくださったり。そう言われるとぐんぐん嬉しくなる方で(笑)。
ほんの少し得られてきた感触ですが、大丈夫だ、と思える演奏会は、緊張するというよりも、心から音楽を楽しむことが出来ます。どれくらい準備をしたか、というのも大きく関係しているのだと思います。

 

岩槻

納得のいく回数が少しずつ積み重なっていくのでしょうね。

 

佐藤

そのようになっていけば嬉しいです。

 

岩槻

ところで、2月Cプロのワーグナー《トリスタンとイゾルデ》の冒頭の部分は、拍も在ってないような感じで、木管も少しずつ微妙なタイミングで移り変わっていき、タイミングを合わせるのがとても難しそうですねぇ。

 

佐藤

本当に緊張する場面です! 指揮者の指示を見て音が変わる、というよりも、私は「今変わるな」という気配のようなものを感じて吹いています。どの曲でも言えますが、周りとの調和が大事だと思います。あの何とも言えない音の調和は、音楽をやっていて良かった、と思える瞬間の1つです。

 

岩槻

PMFでは2年首席を務められ、スイスの音楽祭にも参加なさったりと、さまざまなところに飛び込んでいらっしゃいますね?

 

佐藤

行動に移す前は不安で仕方ないわりには、1人で知らない所に行って知らない方と交流するうちに、気づくと楽しんでいます。

 

岩槻

きっと、流れを楽しめる方なのでしょうね。

 

佐藤

シドニーにいた頃、かなり田舎をツアーで回り、モーテルなどに泊まったりしたことが、シドニー留学のなかでいちばん楽しかった思い出かも! 留学先にオーストラリアを選ぶのも珍しいと言われましたが、目指す先生にも師事でき、最高の決断でした。絶対日本に帰って来ようと思っていたことも何でも挑戦出来た原動力だったと思います。1年ちょっとフリー奏者を経験し、初めて受けたプロのオーケストラがN響でした。

 

岩槻

吹いてみたい曲などありますか?

 

佐藤

目の前のことで精いっぱいですが、なんでも吹いてみたいです。

 

岩槻

どのようなファゴット奏者になりたいですか?

 

佐藤

ファゴットは低音域で和声構成音を吹く役割も多く、自分が吹くことによって、オケに和音の厚みを与える役回りを果たすことになります。音楽は自分の心の持ち方が音に出てしまうと思うので、切羽詰まった感じにならないようにしなければと思います。ふだんから、いろいろなことに追われてピリピリしないようにしなければと。「なんかイイよね」という奏者になりたいのですが、そういう感じは、なんとなくではなく、いろんな努力でバランスをとった結果、得られるのではないかと感じています。

 

岩槻

なんとなく安心する人ってきっと、それなりに腐心した賜物なのではないかと、私も思うときがあります。ホワンとした感じを目指して、頑張ってください(笑)。

 

写真撮影 ― 堀田正矩
「フィルハーモニー」2010年5月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

岩槻里子

聞き手

岩槻里子

いわつき・さとこ

NHKアナウンサー。愛知県出身。津田塾大学卒業、上智大学大学院博士前期課程修了。1998年NHK入局。2007年6月~2008年3月までメインキャスターを務めた「お元気ですか日本列島」では気さくな人柄が人気を呼んだ。2008年7月から「COOL JAPAN―発掘!かっこいいニッポン」のナレーションを担当。2008年4月から2011年3月まで「N響アワー」に出演。趣味はヴァイオリン。