NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

甲斐雅之

甲斐雅之

フルート

かい・まさゆき

広島県出身。東京藝術大学、同大大学院修了。第61回日本音楽コンクールおよび第9回日本フルートコンベンション・コンクール入選。2002年1月1日N響入団。2005年9月〜2006年9月、モーツァルテウム音楽院留学(文化庁平成17年度新進芸術家海外留学制度)。

 

岩槻

今年で入団7年目ですが、オーケストラのレパートリーは一通り、あたられた頃でしょうか。

 

甲斐

出番・降番の都合で、N響では“まだ”という作品に意外なものもあるのです。たとえば、ブラームスの交響曲では4曲のうち《第2番》と《第4番》しかN響では演奏したことがなく、《第1番》《第3番》を早くN響のなかで演奏したいです。ブルックナーはフルートが2本の場合が多く、個人的には朝比奈隆先生が振られた《第4番》(2000年11月の定期)にエキストラとして出て以来、乗っていないかもしれません。

 

岩槻

N響のフルート・セクションはどのような雰囲気なんですか?

 

甲斐

お昼ごはんもツアーでの晩ごはんもいっしょのことが多く、和気あいあいの雰囲気です。たとえば木管のなかで唯一フルートはリードがありません。他はリードがどうしたこうしたという話があるのですが、われわれフルートにはあまり関係ない話ですので、自然にフルート特有の悩みでまとまるせいなのでしょうか。

 

岩槻

じゃあ、先輩方は……

 

甲斐

やさしいです。もちろん、基本的には個人主義なのですがしかし、伸び伸びとやりたいことをやらせてくれる深い懐を感じています。普段からコミュニケーションが密なせいか、食事をしているときもそうなのですが、演奏中も、○○さんはこう出てくるだろうなということが伝わってきます。言葉では表せない、了解の空気というか。

 

岩槻

フルート・パートの方々はいつも端正な感じで吹いていらっしゃるせいか、品が良くて、付き合いも淡白なのかなーと勝手な想像をしていましたが、見方が変わりました(笑)。
甲斐さんは今フルート・パートのなかでいちばん若いわけですが、どのようなフルーティストを目指していますか?

 

甲斐

まず、同じ楽器なのに異なる材質があるのは、フルートの特徴の1つでしょうね。本当は材質によって響きも異なるのですが、こういう音色を出したい、こういう音楽にしたい、という感覚や方向性は、われわれのパートでは1つになっていると自負していますし、そうしたいといつも想っています。

 

岩槻

ジャンルは?

 

甲斐

室内楽やソロなど、広い分野で演奏し、できるようにしています。室内楽などに参加しますと、それまで見えなかった部分に出会うことが多いです。たとえば、オーケストラに比べて全体の人数が少ない室内楽ではやはり1人の負担も増えますので、表現の仕方などで痛感することが多々あります。

 

岩槻

1年間、ザルツブルクに留学なさっていますね。

 

甲斐

師事したい先生(ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団首席でモーツァルテウム音楽院教授のミヒャエル・マルティン・コフラー氏)のもとでの貴重な1年間でした。借りた部屋がモーツァルトの生まれた家のすぐ近くで、「この大聖堂につながるこの道をオルガン奏者として何回足繁く通ったのかな?」とか、雪が降った日には「ああモーツァルトもきっと寒かったのかなぁ?」とかたくさんイメージが膨らみました。留学していた2006年がちょうどモーツァルト生誕250年の記念年でもありましたし、夏の恒例の音楽祭では数々のコンサートに出向き〈大好きなモーツァルト〉をとことん堪能しました!

 

岩槻

得難いご経験をされたのですね。ところで、普段はどんな練習の仕方をしているのですか?

 

甲斐

団員はやはり音楽が好きな方ばかりなので、定期公演の前に2日間(時には3日間)ある全体での練習日には朝早くから鳴らし、練習後も室内楽の練習をするなど、疲れを知らないんじゃないかと思います(笑)。練習は10時からですので、僕の場合は8時半頃に練習場に入り、8時45分頃から1時間基礎練習をしますが、その時間は自分を解き放ち、楽器と会話するかのようにゆっくりと息を吹き込み楽器を温めていきます。
技術的なことはもちろん個人的な練習でクリアして全体の練習に臨むわけですが、自分の勝手なイメージで全てを作り上げてしまわず、その前段階、60〜70%で留めています。なぜなら、オーケストラの練習のなかで発せられる指示に対応できにくくなり、機転が効かなくなってしまうからです。全体の練習が始まってから100%にもっていき、ゲネプロも含めて3日間(4日間)で目指す音楽に完成できるようにと思っています。

 

岩槻

フルートはプロとアマチュアの持つ楽器の値段は弦楽器ほどちがわないのに、音色はなぜあれほどちがうのでしょうか?

 

甲斐

今、アマチュアの方も羨ましくなるような楽器をお持ちの方が増えました。
確かに良い楽器に買い替えられると「音色も良くなり、すごく豊かな響きが得られ、吹けない部分も吹けるようになった」とおっしゃる方も多く、そう感じられると思います。そこにさらに、ある程度しっかりした基礎練習で奏法を身につければ、さまざまな楽器で望む音色を得られるようになるのではないでしょうか。

 

岩槻

やはり基礎練習と体力なのですね、何事も。

 

甲斐

時間の制約もあるなかで練習なさっている方も多いと思いますが、できるならば毎日、日記をつけるように、5分でもいいですから続けられれば、格段にレヴェルがちがってくると思います。

 

岩槻

心強いです!ありがとうございました。

 

写真撮影 ― 堀田正矩
「フィルハーモニー」2009年4月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

岩槻里子

聞き手

岩槻里子

いわつき・さとこ

NHKアナウンサー。愛知県出身。津田塾大学卒業、上智大学大学院博士前期課程修了。1998年NHK入局。2007年6月~2008年3月までメインキャスターを務めた「お元気ですか日本列島」では気さくな人柄が人気を呼んだ。2008年7月から「COOL JAPAN―発掘!かっこいいニッポン」のナレーションを担当。2008年4月から2011年3月まで「N響アワー」に出演。趣味はヴァイオリン。