NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

猶井悠樹

猶井悠樹

ヴァイオリン

なおい・ゆうき

ドイツ、ボン出身。桐朋女子高等学校音楽科を経て、同大学卒業。これまでに、若い人のための「サイトウ・キネン室内楽勉強会」、小澤征爾音楽塾、軽井沢八月祭、東京・春・音楽祭、水戸室内管弦楽団などに参加。ハンブルクにてトーマス・ブランディスに師事し、選抜コンサートに出演。これまでに、釋伸司、奥田章子、加藤知子、堀正文の各氏に師事。2012年10月1日入団。ヴァイオリン奏者。ソロ・コンサートや室内楽演奏会など、積極的に演奏活動に取り組んでいる。

 

理想の音楽人生をいま探しています

華恵

昨年の10 月に入団されたばかりですね。一番若い世代として、いかがですか。

 

猶井

まだまだ必死ですが、近頃は少し楽しめるようになってきました。

 

華恵

余裕ですね?

 

猶井

とんでもない。今も生まれて初めてのインタビューで緊張しています。

 

華恵

ヴァイオリンはいつ頃からですか?

 

猶井

5歳からですが、真剣に弾き始めたのは中学校2年の時に音楽高校の受験を考えてからです。

 

華恵

お父様がホルン奏者でいらっしゃいますが、他の楽器は考えませんでしたか?

 

猶井

受験すると決めたのにヴァイオリンを全然練習しないので、「ホルンにするか」と言われて一度始めたことがありますが、親と一緒の楽器には抵抗感がありました。小さい頃には「チェロは?」と勧められて、いろいろなCDをかけてくれたのですが、「もっと明るい曲ないん?」って聞いたらしくて。それでそのままヴァイオリンをのんびり続けました。

 

華恵

音楽高校の受験を決意したのはどうしてですか。

 

猶井

こんな想像をしたんです。将来年をとったとき、近所の公園で遊ぶ子ども達に「おじいちゃんは昔ヴァイオリン弾いてたんやで」って自慢するんですが、子ども達から「ウソやろ」って言われてしまう。そこで「じゃあ弾いたろか」と言って公園でヴァイオリンを弾いてみせると「わぁ、スゲエ!」と尊敬される……こんなおじいさんになれたらかっこいいなと思ったんです。

 

華恵

音楽高校に入ってから、真剣に取り組んだんですね。

 

猶井

中学の時までは音楽室はプロレスごっこの格好の場所でしたが、高校入学間もないころ授業でカラヤンの《田園》を聴いたんです。「こんなにいい曲だったんだ」と涙が出そうになりました。そこから音楽が本当に好きになりました。僕の場合、親が音楽家で当たり前のように一日中家の中で音楽が鳴っていたので、自分から興味を持つことなくずっといましたから、初めて音楽に向き合う気持ちが持てました。いったん好きになってからは夢中になりました。

 

 

 

華恵

ドイツでお生まれなんですね。何歳までいらしたんですか?

 

猶井

父がベートーヴェン・ハレ管弦楽団のホルン奏者でしたので。3歳で神戸・西宮に帰国しました。

 

華恵

帰国後もドイツを訪ねる機会はありました?

 

猶井

両親の友人を訪ねて何度も行きました。

 

華恵

そこでドイツのオーケストラ音楽や室内楽に触れることができましたよね。

 

猶井

そうですね。向こうならではの空気というのはやっぱりありますよね。教会に行くのも好きでした。

 

華恵

どんな教会なんですか。

 

猶井

街の中心に建っていて、街を守っているような存在感があって。建物の中に入ってみると音が残る響きの感覚が心地いいんです。リューベックの教会が一番好きです。ブクステフーデがオルガンを弾いていたらしく、バッハがわざわざ聴きに行った教会だそうです。小さな教会で内装がちょっとピンク色っぽかったかな。入ったとたん、包まれるような感じがするんです。

 

華恵

教会の空気は音楽に結びつけて考えたりしますか?

 

猶井

やはり関係性は絶対にあると思いますね。クラシック音楽は教会から生まれた音楽ですし。

 

華恵

N響に入られてからはひとりでゆっくりする時間は?

 

猶井

なくなりましたね。神社も好きなんですがなかなか行けません。

 

華恵

これからN響でどういう演奏活動をしていきたいですか?

 

猶井

あるピアニストの方と出会ってから自分の音楽に対する人生観がガラッと変わりました。N響の一度目のオーディションに落ちて、方向がわからなくなり、必死に自分で研究し直していた時期に出会った方で、室内楽を一緒にさせていただいて大きな刺激を受けました。自分の音楽の理想に対しても少しずつイメージができてきたような気がします。N響で弾けることも楽しくてなりません。一度弾くと楽曲への理解が深まるので、本当にオーケストラは楽しいなと思います。

 

華恵

どんな楽しさなんですか?

 

猶井

オーケストラを勉強するには一番ぜいたくな環境にいると思います。何度もその曲を演奏したことのある先輩方が教えてくださるのはありがたいです。自分なりに勉強をして行くと、より深くわかるようになります。この環境が幸せですね。

 

写真撮影 ― 藤本史昭

2013年1月取材 ※記事の内容およびプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

華恵

聞き手

華恵

はなえ

1991年アメリカ生まれ。6歳から日本に住む。2003年、12歳で『小学生日記』を刊行し、エッセイストとしてデビュー。NHK BSプレミアム「世界遺産~一万年の叙事詩~」でのナビゲーター、連載エッセイなど、幅広く活躍中。現在、東京藝術大学音楽学部楽理科に在学中。